「見附島は地域の宝」 崩落心配、本紙報道受け住民続々訪れ

斜面崩落の被害が確認された見附島を見つめる人々=10日午後4時45分、珠洲市宝立町鵜飼

 相次ぐ地震で斜面の崩落が進んでいることが分かった珠洲市の名勝「見附島(みつけじま)」に10日、地元住民が次々と訪れ、地域のシンボルの変化を心配そうに見つめた。「細うなってしもた」「自分の身を削られるような思い」と残念がる声の一方、凛と立つ姿に「美しさは保っている」と話す人も。復興に励む珠洲の人々の心のよりどころとして、島は変わらぬ存在感を放っている。

 見附島の斜面崩落は、北國新聞社のドローン撮影で明らかになった。10日付の本紙報道で被害を知り、早朝から足を運ぶ人が目立った。

 本紙を手に訪れた近隣の40代女性は「年々痩せ細り、上の木々もボリュームがなくなってきた。まるで年老いてゆく人間のようで、さみしい」と話した。

 見附島を眺めながら散歩するのが長年の日課という珠洲市宝立町の森山晋作さん(90)は「昔は小島を従え、もっと太かったのに」と以前の力強い姿を懐かしんだ。徒歩2分の距離に住む水鶏口(くいなぐち)弘子さん(85)は「県外の人に出身地を言うと『見附島のところですね』と言われるのがうれしかった。地域の宝が崩れるのは自分の身を削られるような思いがする」と吐露した。

 「我々にとって気持ちのよりどころになっている」と話したのは同市宝立町の中梶初男さん(74)。30年ほど前、小学生の長男が市内を夜通し歩くイベントに参加した時の思い出を振り返り「ヘトヘトになって帰ってきた長男が見附島を見て感極まり、せきを切ったように号泣していた。島はいつまでも大切な存在」と愛着を語った。

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