<社説>児相職員わいせつ 面接の在り方 見直しを

 児童福祉行政への信頼を失墜させる事態だ。なぜ、このようなことが起きたのか。県は児童面接業務の在り方の検証と見直しを含む再発防止策を策定すべきだ。 今年3月、県内の小学校で児童と面接中にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ容疑で県職員が県警に逮捕された。職員は容疑を大筋で認めている。職員は3月まで児童福祉司として児童相談所に勤めていた。

 厳しい成育環境にある児童を守るべき立場にある職員が許しがたい行為をした。言語道断というほかない。県は被害に遭った児童の精神的ケアに努めてほしい。

 県子ども生活福祉部の宮平道子部長は「あってはならない事態に強い衝撃を受けている」というコメントを出した。玉城デニー知事は被害児童や保護者に対し「心からおわびする」と謝罪した。

 児童福祉司が児童にわいせつ行為をすることを、県は想定していなかったであろう。

 しかし、「強い衝撃」では済まない。犯罪を許すような業務上の不備や欠陥があったと考えるべきである。それを究明し、是正しなければ再発防止はおぼつかない。

 県警の調べによると、児童の面接は就学時間中、小学校の一室で行われた。職員は児童と2人きりになり、わいせつ行為に及び、その様子をスマートフォンで撮影した。

 職員は面接場所がほかの児童や職員の目には付きにくいことを理解し、児童にわいせつ行為をしたとみられている。児童福祉司という立場を利用した犯行とも考えられる。

 職員と児童の1対1による面接の在り方を見直す必要がある。複数人による面接によって犯罪を未然に防ぐべきではないか。面接の場や周囲の環境にも注意しなければならない。児童面接がどのような方法や環境でなされているかしっかり検証し、課題を洗い出してほしい。

 事件を受けた記者会見で、県は犯罪防止を想定した面接マニュアルがないことを明らかにした。つまり、犯罪防止策がないということだ。このような事態が起きた以上、犯罪を未然に防ぐためのマニュアルをまとめるべきだ。

 面接業務に当たる職員の適格性も組織として見極める必要があろう。困難な境遇に置かれた子どもたちと向き合う職員には高い倫理性と経験が求められる。県は組織として、どのような職員が児童面接に適しているかチェックすべきだ。研修などによる人材育成も欠かせない。

 わいせつ行為が目的で子どもに近づき、てなずけることをグルーミングと呼ぶ。今回の事態もグルーミングに該当するとの指摘がある。法務省は子どもの性被害を未然に防ぐため「グルーミング罪」の新設を検討している。

 子どもを性犯罪から守らなければならない。今回の事態を受け、その決意を沖縄社会全体で共有したい。

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