「飲んだら乗るな」願い込めたクラフトビール 食パン専門店×加西署 ラベルにパトカー、廃棄食パン使い開発

連携してクラフトビールを開発した加西署の大戸英治署長(左)と食パン専門店「マッシモ」の浅野英樹さん=加西署

 春の交通安全運動(11~20日)を前に、食パン専門店「マッシモ」(兵庫県加西市北条町東高室)と加西署は、飲酒運転根絶の願いを込めたクラフトビールを共同で完成させ、10日に同署で公開した。その名も「ポリスエール SDDs」。原料の一部に廃棄予定の食パンを使い、環境にも優しい一本だ。店主の浅野英樹さん(37)は「飲んだら乗るな、と商品を通じて訴えたい」と話す。

 同店は市内産の小麦「ゆめちから」を使用した食パンが人気を集め、同市のふるさと納税返礼品にも採用されている。昨年も同署の交通安全キャンペーンに協力し、パンの袋に啓発シールを貼って販売した。

 欧米ではフードロスを減らすため、廃棄処分されるパンを発酵させたビールが開発された-とニュース番組で知った浅野さん。昨夏、同署の鈴木義則交通課長から再び協力を依頼された時にビール醸造を提案し、啓発商品としての開発が決まった。

 醸造を担当したのは加古川市の「マイルストーンブルーイング」。焼き色がつきすぎたり、形が崩れたりした食パンを麦芽に1割ほど混ぜ込み、ビール酵母で醸造した。アルコール分は5%で「ちゃんとビールの味がします」と浅野さん。商品名は鈴木課長が「寝ずに考えた」。持続可能な開発目標(SDGs)の響きを意識したという。

 ラベルにはパトカーをデザインし、「飲んだら乗るな」と印象付けた。新型コロナウイルスによる行動制限のない夏が近づき、飲酒機会の増加が予想される。お酒を飲む人に、直接メッセージを伝えることができ、同署の大戸英治署長は「飲酒運転根絶へのアイデアに敬意を表したい」とたたえた。

 初回に製造された400本は加西市のふるさと納税返礼品として、6月上旬から取り扱いを開始する。1本330ミリリットル入りで、1ケース(6本入り)1万6千円。(伊田雄馬)

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