<南風>それって意味あるの?

 最近、子どもたちや若い人たちと話すと「それって意味あるの?」という言葉が返ってくる。その先、自分にとって有益か不確かな物事に関し、それを行う必要性や意義を感じない。そのような意味合いが「それって意味あるの?」との言葉には含まれているのではないか。要は「無駄なことはしたくない」のだろう。

 私が中学生の頃だったと思う。CDラジカセを誕生日の時に買ってもらった。それからはCDにある曲をカセットテープにダビングし、自分なりに曲順を入れ替え、カセットテープのケースの裏に曲名を記載しコレクションを増やしていった。大学を卒業し、初めて車を買った際には、車にあるラジカセで音楽を聴くために、久しぶりに同様の編集を行った。そう、いつか隣の助手席に乗るであろう女の子ウケを狙って。

 それに意味があるかというと、全くないと思う。この行為が今の自分の何かを形成しているワケでもない。しかし同じようなことをしていた誰かが、その手間や不便さを感じ、今では携帯の中に自分のオリジナルアルバムを作り、車内で流すことを可能とした。

 亡くなったアップルのスティーブ・ジョブズは、ある大学の卒業式で学生に「将来を予想して、点と点をつなぐことなどできない。できるのは、後からつなぎ合わせることだけだ。だから、我々は今やっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない」と学生に説いた。

 私自身、今は福祉の仕事をしているが福祉系大学を出たわけでもないし社会人になるまで福祉を志したこともない。その時に目の前にあるものを、ただ愚直に突き進んだ結果、気がつくと経営者になっていた。意味があるからではなく意味を作るための点を増やす作業こそが、若い時にしかできないことだと思う。

(神谷牧人、アソシア代表)

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