アート集団「チームラボ」、重要文化財で瞑想の空間演出 光の球体で「存在とは」問う 姫路・書写山円教寺

はっきりと知覚されるが、物質的な境界はない光の球体が浮かぶ「質量のない太陽、歪んだ空間」=書写山円教寺(撮影・辰巳直之)

 国際的なデジタルアート集団「チームラボ」の空間展示「認知上の存在」(神戸新聞社など後援)が、書写山円教寺(兵庫県姫路市書写)で開かれている。国の重要文化財「食堂(じきどう)」内に、光の球体を用いて「存在とは何か」を問う2作品が並ぶ。チームラボの猪子寿之代表は「山を登ってきて少しゆっくり、『物理的にはないが、人があると思ってしまうもの』を見てほしい」と話す。(上杉順子)

 著名な芸術家を年替わりで姫路に招く、姫路市立美術館の4カ年事業「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」の3年目の取り組み。チームラボは本年度、円教寺と同美術館で展示を行う。

 今回の円教寺での展示は、チームラボの作品の大きな特徴として知られる「にぎやかな色と光の洪水」とは、趣が異なる。

 現在の食堂は複雑な構造となっており、室町時代に着工されてから約5世紀にわたって未完成のままで、1963年にようやく完成した。各地から参集した僧侶が、寝食を共にする2階建ての寄宿舎だった。その全長が約38メートルある1階の奥深い空間を生かし、「ある種の瞑想(めいそう)状態になるような」(猪子さん)鑑賞環境をつくったという。

 会場には作品以外の光源はなく、周遊もできない。闇の中で立ち止まり、球体が放つ光を注視する。

 手前の「質量のない太陽、歪(ゆが)んだ空間」は、四角い空間の中央に球体があり、見つめると周りにオレンジ色の光輪が浮かんでくる。奥の「我々(われわれ)の中にある巨大火花」は、中心の赤い点と向き合うと、次第にそこから伸びる、無数の線や点が見えてくる。いずれもそこにはない光の形や輝きだが、環境や認知の作用でそう見えるのだという。

 12月3日まで。会期中は無休で、午前10時~午後3時45分。一般500円(同寺拝観の志納金500円が別途必要)。市立美術館TEL079.222.2288

© 株式会社神戸新聞社