【連載コラム】第11回:ア・リーグ東部地区が歴史的な高勝率 5球団とも貯金でシーズン終了なら史上初

写真:今季好調を維持しているレイズを率いるケビン・キャッシュ監督 @Getty images

MLBでは今季から1つの球団が残りの全29球団と対戦する新しい日程フォーマットが採用されています。これはポストシーズン出場枠が拡大されたことを受け、ポストシーズン争いをなるべく平等な条件で行えるようにとられた措置です。新スケジュールでは、同地区対決が76試合(4球団と19試合ずつ)から52試合(4球団と13試合ずつ)へ減少。同リーグの他地区との対戦は66試合から64試合とほぼ変わっていませんが、インターリーグ(他リーグとの対戦)が20試合から46試合へ大幅に増加しました。

昨季までのインターリーグは、特定のライバル球団(ヤンキースとメッツ、ドジャースとエンゼルス、カブスとホワイトソックスなど)を除く試合は、東部地区、中部地区、西部地区が3年単位でローテーションする形で日程が組まれていました。よって、インターリーグの対戦相手となる地区のレベルによって、有利・不利が生まれていたのです。これを全球団と対戦するスケジュールに変更したことで、同地区に所属する球団同士ではスケジュールの91%が同じ(昨季までは84%)、同リーグの他地区に所属する球団同士でも76%が同じ(昨季までは52%)になり、昨季までと比較して、より平等な条件でポストシーズン争いを行えるようになりました。

2023年シーズンは開幕から6週間ほどが経過していますが、日本時間5月9日の全試合が終了した時点での各地区の勝率は以下のようになっています。

ア・リーグ東部地区 112勝66敗 勝率.629 (地区外勝率は85勝39敗で.685)
ア・リーグ中部地区 73勝103敗 勝率.415 (地区外勝率は52勝82敗で.388)
ア・リーグ西部地区 83勝93敗 勝率.472 (地区外勝率は56勝66敗で.459)
ナ・リーグ東部地区 89勝87敗 勝率.506 (地区外勝率は63勝61敗で.508)
ナ・リーグ中部地区 84勝92敗 勝率.477 (地区外勝率は64勝72敗で.471)
ナ・リーグ西部地区 88勝88敗 勝率.500 (地区外勝率は57勝57敗で.500)

上記からもわかるように、長年「レベルが高い」「MLBトップの激戦区」と言われ続けてきたア・リーグ東部地区の5球団が猛烈な勢いで白星を重ねています。首位レイズが開幕から快進撃を続けているだけでなく、オリオールズ、ブルージェイズ、レッドソックスもすでに20勝を突破。最下位のヤンキースでさえ、19勝17敗と2つの貯金を持っています。同地区同士で潰し合いをした試合を除けば、その勝率は.685と7割近い数字になります。

MLB公式サイトのサラ・ラングス記者によると、地区制が導入された1969年以降、最も勝率が高かったのは2002年のア・リーグ西部地区(.566)だそうです。2001年のア・リーグ西部地区(.565)、2012年のア・リーグ西部地区(.542)がこれに続きますが、当時のア・リーグ西部地区は4球団でした。最高勝率地区ランキングの4位は2022年のア・リーグ東部地区(.541)であり、これが5球団の地区による最高記録となっています。つまり、ア・リーグ東部地区は昨季の時点ですでに歴史的な強さを誇っていたわけですが、新スケジュールが追い風となり、昨季以上のペースで白星を重ねているということになります。

ちなみに、MLBの公式記録を扱うエライアス・スポーツ・ビューロー社によると、シーズンの最も遅い時期まで地区の全球団が貯金を持っていたのは、2005年のナ・リーグ東部地区だそうです。シーズン最終日に最下位のナショナルズが敗れ、81勝81敗の勝率5割ちょうどでシーズン終了となりましたが、「シーズン残り1日」の時点で全5球団が貯金を持っていました。

今季のア・リーグ東部地区は最高勝率記録を更新するだけでなく、全5球団が貯金という史上初の快挙を成し遂げる可能性もあります。シーズンはまだ序盤戦ですが、ア・リーグ東部地区の快進撃を見守っていきたいと思います。

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