「ゼロ・ゼロ融資」利用後の倒産 4月は43件 2020年以降の累計787件、9カ月連続で40件超

~ 2023年4月「ゼロ・ゼロ融資後」倒産の状況 ~

2023年4月に実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)を利用した後の倒産は、43件(前年同月比38.7%増)で、2022年8月から9カ月連続で40件を上回った。2020年7月からの累計は787件に達した。
コロナ禍の資金繰り支援として導入されたゼロ・ゼロ融資は、中小・零細企業の経営を下支えし倒産抑制に大きな効果を発揮した。だが、副作用として過剰債務をもたらし、業績回復が遅れた企業は新たな資金調達が難しく、息切れ倒産に繋がっている。

産業別では、前年同月は発生がなかった建設業が12件(構成比27.9%)発生し、最も多かった。資材価格の高騰や調達難による工期延長に加え、人手不足による外注費負担の増加も重なり資金繰りを圧迫した。
形態別では、民事再生法と会社更生法の再建型が2023年1月以来、3カ月ぶりに発生がなかった。
一方、破産38件(前年同月25件)、特別清算1件(同1件)と消滅型が39件(同26件)発生、全体の90.6%を占めた。ゼロ・ゼロ融資を受けても業績改善が見込めない企業は、生き残りが難しいことを示している。
ゼロ・ゼロ融資は、これから返済のピークを迎える。政府は2023年1月、返済負担を和らげる新たな借換保証制度「コロナ借換保証」を創設した。保証限度額は民間ゼロ・ゼロ融資の上限額6,000万円を上回る1億円で、保証期間等も10年以内(元金棚上げ期間最長5年を含む)となっている。ただ、経営行動計画書の作成や金融機関による継続的な伴走支援が必要で、どこまで普及するか未知数だ。
ゼロ・ゼロ融資の返済に加え、人手不足や物価高など経営環境は厳しい状況が続く。業績回復が遅れ、手元資金が枯渇した中小・零細企業の息切れが、今後も倒産を押し上げる可能性は高い。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


4月の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した倒産は43件、2023年の月次件数では最少

2023年4月の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した倒産は43件(前年同月比38.7%増)だった。「ゼロ・ゼロ融資」を利用後の倒産は、2022年3月から急増してハイペースでの推移を辿ってきた。4月は2023年の月次件数で最少にとどまるも、引き続き40件超と高水準での推移が続く。
負債総額は96億8,900万円で、前年同月(137億100万円)より29.2%減少した。負債50億円以上の倒産が発生せず(前年同月1件)、2カ月連続で前年同月を下回った。

【産業別】建設業が12件で最多

産業別は、最多が建設業の12件で、前年同月ゼロから大幅に増え、全体の約3割(構成比27.9%)を占めた。資材価格の高騰や人手確保のための人件費の上昇で採算が悪化した。
次いで、製造業(前年同月同数)とサービス業他(同)が各8件(構成比18.6%)、卸売業が7件(前年同月比12.5%減)、小売業と情報通信業が各3件、農・林・漁・鉱業と不動産業が各1件で続く。金融・保険業と運輸業は発生がなかった。
10産業のうち、前年同月と比べ増加は3産業、減少は3産業、同数は4産業だった。

【業種別】建設関連業種が上位

業種(中分類)別は、「総合工事業」が7件で最多、2番目に「職別工事業」が4件で続く。
資材価格の高騰や資材調達の遅れが経営を直撃し、持ちこたえられなかった。
次いで、コロナ禍の受注低迷や納期延長が響いた「情報サービス業」が3件で続く。
このほか、対面サービス業の「洗濯・理容・美容・浴場業」、「飲食店」、飲食店向けの「飲食料品卸売業」、アパレル関連の「繊維・衣服等卸売業」などが各2件で並ぶ。

【形態別】再建型はゼロ

形態別では、消滅型の破産が38件(構成比88.3%)で、全体の約9割を占めた。特別清算1件と合わせた消滅型は39件だった。
一方、再建型の民事再生法(前年同月1件)と会社更生法(同ゼロ)は、2023年1月以来、3カ月ぶりに発生がなかった。
このほか、取引停止処分が前年同月同数の4件(構成比9.3%)発生した。

【従業員数別】10人未満が6割超

従業員数では、最多が5人未満の17件(構成比39.5%)で、約4割を占めた。
次いで、5人以上10人未満と10人以上20人未満が各11件(同25.5%)で続く。従業員数10人未満の小規模倒産が6割超(28件、構成比65.1%)を占めた。
前年同月に2件発生した50人以上300人未満はゼロで、300人以上の倒産も発生がなかった。

【地区別】関東が19件で最多

地区別では、最多が関東の19件(前年同月比171.4%増)で、前年同月の2.7倍増と急増。全体の4割超(構成比44.1%)を占めた。
次いで、九州が7件(前年同月同数)、近畿が6件(同7件)、中部が4件(同1件)で続く。中国を除く8地区で発生した。

都道府県別では、東京都が14件で最多。以下、大阪府4件、福岡県と愛知県が各3件で続く。大都市圏の4都府県で過半数(24件、構成比55.8%)を占めた。

© 株式会社東京商工リサーチ