従業員結束「いつもの店に」 ショッピングセンター「シーサイド」全店営業再開

全店営業が再開され、買い物に訪れた市民と言葉を交わす従業員=11日午後4時半、珠洲市飯田町

  ●「ここがないと買い物できん」

 珠洲市で震度6強の揺れを観測し、一部店舗で休業を余儀なくされていた市内唯一のショッピングセンター「シーサイド」(飯田町)が11日、全12店舗による営業を6日ぶりに再開した。床に亀裂が走るなど店内には地震の爪痕が色濃く残るが、「ここがないと買い物できないお年寄りが多い」と、被災者でもある従業員たちが結束。開店直後から地震前と同じように「いつもの店」を楽しむ住民らの姿が見られた。

 シーサイドは食品スーパー「サンライフ珠洲食品館」を核テナントに食堂や靴店、書店などが入居する。11日に呉服店と喫茶店が営業を再開し、全12店舗がそろった。

 「家は大丈夫やったけ」「なーん、かちゃかちゃやわいね」。午前9時の開店と同時に付近の住民が次々と訪れ、顔見知りの客や従業員との会話に花を咲かせた。

 喫茶「スマイル」の店主大西千賀子さん(69)は「客も従業員も珠洲の人ばっかり。ここに来れば誰かに会えるし、そのために来る人も多い」と話す。野々江町の柴田正夫さん(67)は「毎日来とるよ。生活の一部やったから、再開はうれしい」と笑顔を見せた。

 施設内は地震で業務用のエレベーターが壊れたほか、スプリンクラーが誤作動して売り場が水浸しになった。従業員らは特に食品スーパーの復旧を急ぎ、棚が傾いたり、冷凍食品などがそろわなかったりと不備はあったものの、地震翌日の6日から店を開けた。

 「サンライフ珠洲食品館」の石川周三店長(59)は、不完全な状態で開店することに反対意見はあったとしながら「『店が開いとって助かった』『あんたの顔を見たら元気が出た』との言葉をもらい、決断が間違ってなかったと実感した」と涙ながらに振り返った。

  ●床に亀裂、爪痕残るも

 店内の壁は剝がれたままで、エレベーターは復旧のめどが立っていない。それでも、施設を運営する飯田港共同店舗事業協同組合の多間利一理事長(60)は「自分たちは住民の皆さんに支えられてここまできた。店はまだまだ完全な状態ではないが、珠洲の人たちの暮らしを支えるための努力は惜しまない」と力強く語った。

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