<金口木舌>熱き闘いの裏にドラマ

 年度替わりの会議で「5月は全島がある」と話す同僚に「ん?」となった。「全島と言えばエイサーまつり。開催は旧盆の翌週末だろう」と思ったのは「エイサーのまち」沖縄市を担当した経験からか。聞くと春の全島闘牛大会のことだと言う。そうだ彼女は「闘牛記者」だった

▼「全島」。島一番を競う響きはいかにもロマンを感じる。ふいに多様な「全島」の存在を実感したが、それも文化資源の豊かさの証し

▼最近は家族連れや女性の闘牛観戦者も増えた。競技的な側面だけでなく、牛と牛主の絆の深さを知れば、闘牛はもっと楽しめると闘牛実況アナウンサーの伊波大志さんは熱弁する

▼愛牛が「王者」になる日を夢見る牛主たちは昼も夜も牛に付き添い、世話をする。中には牛舎で料理し、牛のそばで夕食を共にする家族までいるそう。大会で勝利後に飼い主を背中に乗せる牛の表情は誇らしそうだ

▼14日には「闘牛のまち」うるま市で「春の全島」がある。勝敗の行方もそうだが、牛と牛主の絆の物語もかみしめて観戦してみたい。

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