「こういう道があることを勝って証明したい」“エスパ育ち”藤枝・鈴木翔太の決意 あす「静岡三国決戦」第2ラウンド

5月15日で30周年を迎えるJリーグ。今季のJ2には、清水エスパルス、藤枝MYFC、そして、ジュビロ磐田と史上初めて3つのクラブが顔をそろえました。そこで、この3クラブが対戦する計6試合を「静岡三国決戦」と名付け、“戦国J2”を静岡から盛り上げるべく、共同企画を打ち出しています。第2ラウンドとなるのが、5月13日に行われる清水対藤枝(IAIスタジアム日本平、午後2時キックオフ)。静岡が誇る“サッカーの街”をホームタウンとするクラブ同士の激突です。

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アウェーに乗り込む藤枝には、静岡県藤枝市出身のプレーヤーがいます。DF鈴木翔太選手。2022シーズン、クラブのJ2初昇格に貢献したセンターバックは、中学、高校の6年間、エスパルスのエンブレムを胸に戦った経験を持ちます。清水を離れてから9年、古巣相手に思い出の地・アイスタのピッチに立とうとする26歳が決意を語りました。

前節・山形戦は2点リードからの逆転負けも、古巣との対戦に向けて前を向く鈴木翔太選手

「同期3人もいるし高ぶるものが…」

「アイスタのピッチで試合することをすごく楽しみにしていた。すごくいい雰囲気を作り出してくれるので。同期も3人もいるし、高ぶるものはある」

清水戦を前にした練習終了後、報道陣を前に、こう言葉に力を込めた鈴木選手。今季は全14試合に出場し、いまや、J2初年度で快進撃を続ける藤枝守備陣に欠かせないひとりです。

小学校時代、地元・藤枝の高洲南サッカースポーツ少年団でプレーした鈴木選手が中学入学と同時に門を叩いたのが、清水エスパルスジュニアユース。中3の時には、夏の日本クラブユースサッカー選手権で優勝。ユースでも、元日本代表のFW北川航也選手やMF西澤健太選手、MF宮本航汰選手など、現在、エスパルスのトップチームで活躍する同期とともに、チームの主力として活躍しました。

「ジュニアユースの時には横山(貴之)監督、ユースは大榎(克己)さんと平岡(宏章)さんに教わり、自分のサッカーの土台となる部分を作り上げてもらった6年間だった。同期の存在も自分の中で大きく、自分も頑張ろうと切磋琢磨した」

しかし、北川選手らがトップ昇格を果たす中、プロの道は遠く、4年後に清水に戻ることを目標に、東京学芸大に進学します。しかし、ここでも夢はかなわず、鈴木選手が選んだのは、故郷のクラブ・藤枝MYFCでのプレーでした。

「こういう道があるよ」見本になりたい

「高校、大学と(清水のトップチームに)昇格できなかった悔しさはある。上がれない選手は、ほかにもたくさんいる。トップ昇格ができない中でも『こういう道があるよ』と。エスパルス以外のクラブで、また、アイスタに帰ってきて、試合ができて、自分のプレーを表現する、という見本になりたい」

鈴木選手の原動力となったのは、間違いなくアカデミー時代の“同期”の存在でした。

「自分が大学でプレーしていた時、(北川選手ら)みんながJリーグで毎週試合に出ていたことがすごい刺激になっていた。『もうひと頑張りしなきゃいけない』と思わせてくれた。まだまだ、雲の上の存在なんで追い越せるように、という思いが常にある」

アカデミー卒業後、アイスタ日本平にエスパルスのゲームを観に行くことはなかった鈴木選手。あのスタジアムはあくまで「プレーする場所」だといいます。

“同期”の特徴やパターンは掴んでいる

プロ入り4年目の2022シーズン、レギュラーを獲得した鈴木選手はクラブ初のJ2昇格に貢献。奇しくも清水がJ2に降格したことで、古巣相手に、しかも日本平でプレーするチャンスが生まれました。

「J1でエスパと対戦して、倒したいという気持ちが強く、(J2での対戦は)本望ではないが、できる機会が来たので本当に楽しみ。ただ、胸を借りるつもりはない。本当に結果にこだわって、絶対勝って、藤枝の攻撃的なサッカーを証明したい。自分たちは強いんだということを証明したい」

“同期”との対戦も待ち遠しいといいます。特に今季右サイドでの起用が多い北川航也選手とのマッチアップは必見です。

「楽しみですね。(北川選手の)ドリブルは映像でもう何回も見て、特徴やパターンは掴んでいるのでしっかり止めたい」

エスパルスは常に成長させてくれた存在 だからこそ…

アイスタで公式戦でプレーするのは、清水ユース時代以来9年ぶり。これまで、背中を押してくれたオレンジサポーターも、今度はライバル、サンバのリズムは藤枝にとって大きなプレッシャーとなります。

「でも、あの応援は聞き慣れていて、アウェーだとあまり思えない。正直、あの応援を聞けば、自分も力が入るし、もう“応援されている”、なと。(サポーターが)素晴らしい雰囲気、空間を作ってくれるので、僕は楽しめると思う。藤枝がボールずっと保持すれば、清水の選手も、サポーターも、フラストレーションが溜まると思う。そういう時間を多く作って、どんどん自分たちのペースに持っていきたい」

自分を育ててくれたエスパルスへの恩返しは勝利すること、ただひとつです。5月13日、鈴木翔太選手はアイスタのピッチでの躍動を誓います。

「エスパルスは、常に自分を成長させてくれた存在。だからこそ勝って、また自分の価値を証明したい。攻守ともにアグレッシブで、自分の左足でスタジアムが沸くようなプレーを見てほしい。アカデミー時代から応援してくれているみなさんのためにも、(アカデミー卒で)いま、大学で頑張ってる子たちのためにも、自分がここで活躍して勝って、その原動力になれたらと思う」

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