道内「道の駅」誕生から30年 「稼ぐ」施設続々

今回特集するのは、道内各地の「道の駅」。道内第1号の施設登録からちょうど30年、当初はドライバーの「休憩」が目的の施設だったが、近年は地元特産の商品を集め、その地域一番の集客拠点へと様変わりする事例が目立っている。道南の七飯町にある「道の駅なないろ・ななえ」もそんな施設のひとつだ。

なないろ・ななえは2018年にオープン。直後の5年間の来場者数は470万人に上る。新鮮な野菜や果物、花卉(かき)類、地元特産のりんごなどを使った加工食品が豊富に並び、近隣はもちろん遠方からも多くの人が訪れる。人気の「王様シイタケ」を使ったコロッケや、ここでしか買えない「ガラナソフト」も注目を集めている。

カフェも併設し、人気の商品をその場で味わうことも可能。施設を運営する七飯町振興公社の山川俊郎代表理事は「今まで買うことのできなかった商品を豊富にそろえていることが、多くの人に来ていただける理由」だと話す。こうした集客力の高い道の駅は、近隣の鹿部町にも。2016年にオープンした「道の駅しかべ間歇泉(かんけつせん)公園」だ。

しかべ間歇泉公園では、豊かな海の恵みを堪能できる「浜の母さん食堂」が人気。期間限定の「甘えび丼」も味わえる。温泉の蒸気を使った「蒸し処」では野菜や肉、ホタテまんなどを自ら蒸して食べることができる。そしてもうひとつ、店内にある「根昆布だし」も大ヒット商品だ。

根昆布だしは、地元産の真昆布を使った道の駅オリジナルの商品で、年間1万本以上を売り上げている。手書きの料理レシピや外国語表記の商品説明が効果を上げ、最近では海外からの旅行者も手にとって購入するようになったという。そんなしかべ間歇泉公園なのだが、実はオープン当初をピークに売り上げは低迷していたのだが、2019年度を境に増加に転じた。その背景にあったのは、「道の駅請負再生人」の存在だ。

全国各地で道の駅のプロデュースを手掛ける会社「シカケ」代表の金山宏樹さん。金山さんは、現地法人を立ち上げてしかべ間歇泉公園の売り場再生に取り組んだ。働く人たちの意識改革(マインドセット)と、働く人に商品知識を持たせること、さらには新商品づくりに挑戦することで集客力を徐々に高めていった。金山さんは現在、新ひだか町の「道の駅・みついし」の再生にも取り組む。

休業状態にあった2階の売り場で今、地元で飼育する豚の肉と三石昆布を原料としたギョーザを製造し、販売しようとしている。新ひだか町まちづくり推進課の中村英貴課長は「ギョーザと聞いた時は戸惑ったが、町内の一次産品を用いて様々なバリエーションの商品を開発できる」と期待を寄せている。町のふるさと納税の返礼品としても活用する計画だ。

防災拠点としての機能を強める道の駅もある。特産品のカキを使ったメニューで知られる「厚岸グルメパーク味覚ターミナル・コンキリエ」は、施設そばの倉庫内に災害時対応の太陽光パネルを常備する。

食品や飲料水、粉ミルクもそなえ、1000人の3食3日分を既に用意している。今後7000人分にまで増やすほか、生活用水確保のため貯水槽を整備する計画もあるという。道の駅は多くが郊外に立地するが、あえて町の真ん中に構えた自治体もある。

2021年にオープンした士別市の「羊のまち 侍・しべつ」は、長らく放置されていた中心市街地のデパート跡地に開設。シャッターが閉まったままの店舗が目立つ中心部を何とか活気づけようと、地元の商店で扱う品を一手に集めたコーナーを設けた。市民の利用は少ないが、立地の良さからドライバーや家族連れが頻繁に訪れ、来場者数はオープンからの2年間で63万人に上った。今後はいかに、地域の交流の場としての存在感を強めていくかが課題となっている。

金山さんは番組MCの杉村太蔵さんらに対し、「多くの道の駅の運営者が、何をどうしたら施設が良くなるのか把握できないのが実情。課題を明らかにしてそこに適切に対処することにまずは取り組むべき」と提言した。

(2023年5月13日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

© テレビ北海道