「ほんとに公式(笑)?」攻め過ぎ動画で「どろソース」出荷倍増狙う オリバーソースの妙にとがったPR作戦

どろソースを使ったさまざまな動画をアップしているオリバーソースのTikTok(ティックトック)の画面

 老舗が発信する動画なのに、なんだかとがっている。今年創業100年を迎えたソースメーカー「オリバーソース」(神戸市中央区)。看板商品の一つ「どろソース」のファンづくりにと、昨夏に始めた動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の配信で、「本当に公式(動画)なの(笑)?」との声まで上がる。

 業務用どろソース1本を使って、ソースせんべいを何枚食べられるか試した動画は、再生回数が170万回を超えた。役員が目隠しでお好み焼きの具を選んだり、スイーツとソースの組み合わせを試してみたり。

 動画のモットーを「NGなしで何でもやる」と語るのは、目隠しの企画にも出演し、配信を担当する取締役企画室長の道満龍彦さん(38)。創業家出身で、曽祖父は初代、父は現社長だ。何でもやりすぎて、社長に内容を伝えていないものもあるという。

 ウスターソース製造の際に生まれる沈殿物を使った高付加価値商品の「どろソース」の出荷量を、2021年の約40万本から28年に倍増する目標を掲げる同社。だが、21年の市場調査では、20代のどろソースの認知度が世代別で最も低い26.3%と不足していることが判明した。

 それもそのはず。吉本新喜劇の俳優原哲男さんが出演し、独特のメロディーに「オリバ~ソ~ス」と乗せたテレビCMは1995年に継続的な放送を終了。販売促進といえば、チラシに載せてもらうよう交渉するなど、スーパーや問屋が相手だった。道満さんは「消費者にダイレクトに商品を知ってもらうことができていなかった」と振り返る。

 神戸・三宮のビジネス交流拠点アンカー神戸で開かれた事業開発プロジェクトで意見をもらいながら、東京のウェブ制作会社と神戸大の学生が21年に立ち上げたウェブ制作のスタートアップ(新興企業)「Furic(フリック)」と協業し、50本超の動画を配信してきた。

 中には、道満さんが「配信前日は眠れなかった…」というものも。グラビアアイドルにソースが飛び散らない栓の開け方を体を揺らしながら説明してもらったセクシー路線には、社内から「やめてほしい」との声も出たという。だが、ふたを開けてみると視聴者の6割が女性。コメントには「何このおもろいの」「攻め過ぎ」「ほんとに公式(笑)?」などというものが中心だったという。

 消費者へのPRに力を入れる道満さんは「われわれが懲り固まっていたプライドをこじ開けてみたら、見てくれた人が評価してくれた」と話す。

 動画は、月8本程度の更新を続けることが目標。売り上げへの貢献はこれからだが、道満さんは「まずは商品を知ってもらい、一回試してもらう。口コミが広まれば、スーパーが置きたくなるという循環をつくりたい」と意気込んでいる。(大盛周平)

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