生徒の存在は「家族以上」 瀬戸内海に浮かぶ離島の中学校 寮母さんの“愛の形”

14日は母の日。愛媛県松山市の北西に浮かぶ人口約3000人の離島・中島(なかじま)で、寮母として中学生を支える女性の仕事ぶりに密着しました。

美しい瀬戸内海の海に囲まれたこの島にあるのが、松山市立中島中学校。全校生徒は26人で、去年から松山市内全域を対象に生徒を受け入れています。

学校の傍に建つ青潮寮(あおしおりょう)には、島外から来た男女計10人が籍を置いています。ここで生活する子どもたちにとって“お母さん”と呼ぶべき存在の、中田真由美さん。青潮寮に2人いる寮母の1人です。

青潮寮 寮母 中田真由美さん
「もともと私は中島の出身で、10年前に家族が病気をして実家に家族で帰ってこようということになりました。たまたま青潮寮の寮母さんの募集があったので」

授業や部活動を終えた子どもたちが寮に帰ってくるのは、午後6時ごろ。中田さんは、2時間ほど前から調理員の女性と夕食の準備に取りかかります。

この日のメイン料理はロールキャベツ。青潮寮のロールキャベツは“巻かない”のが特徴で、寮の中で代々伝わる名物メニューだそうです。

寮母 中田真由美さん
「給食とかぶらないように、寮の献立を決めているんです」

午後6時をまわると、子どもたちが帰ってきました。温かい食事が子どもたちを待っています。

寮の夕食には学校の先生たちも顔を出し、一緒に食卓を囲むことが多いそうです。

大石瀬斗くん(2年)
「めちゃくちゃおいしいです。バランスも考えてくれていて味もおいしい」

中田さんが座るのは、食卓から少し離れた位置。

中田さん
「食事をしながら、みんなの様子を見渡しています。食べ具合、食べ進めるスピードを見ています。今日はちょっと食べてないなとか、体調面に合わせて生徒たちを見ることが増えました」

夕食を終えた子どもたちは入浴と自習に。その間も、中田さんは手をとめません。

中田さん
「明日の朝食のご飯を研いでおくんです。朝が早いので」
(何時から?)
「4時半に起きます」

朝食の準備をしながら、子どもたちが起きているかを確認します。

身支度を整えて、食堂に姿を見せる子どもたち。まだ少し眠そうな子もいますが、みんなで朝食タイムです。

中田さん
「起きてすぐですし、夜ほどは進みは良くないんですけど、基本全部食べてくれます。栄養バランスが取れているから風邪もひかずにみんな元気に過ごせているので、それだけは自慢ですね」

子どもたちは、きょうも元気に学校へ向かいます。

子どもたちを見送ると、中田さんは掃除機をかけたり、布団を干したりと大忙しです。

そこに現れた女性。青潮寮のもう1人の寮母、堀江松美(まつみ)さんです。

青潮寮の寮母は、中田さんと堀江さんの2人体制。毎日、昼過ぎに連絡事項を引き継ぎ、交代しています。

堀江さん
「気が付いたこととか、もうちょっとこうした方がいいよ、ということを言ってくれるので、私がそれを聞いて気を付けたりとか。それの繰り返しですかね」
中田さん
「あと、献立の相談とかですね」

子どもたちの体調などを常に気にかけている2人の寮母さん。我が子へと注ぐかのようなその愛情は、しっかりと子どもたちに伝わっています。

男子生徒
「間違っていることは厳しく教えてくれたりして、しっかり丁寧に教えてくれる優しい人です。すごく優しくて喋りやすい感じですね。2人とも愛のある接し方をしてくれます」

引き継ぎを済ませ、勤務を終えた中田さん。寮母という仕事はハードではあるものの、充実しているといいます。

中田さん
「日々、仕事に追われてはいるんですけど、ご飯を食べて空っぽのお皿を見て『ありがとうございます』とか『ごちそうさまでした』という声を聞いたときとかは、この仕事にやりがいを感じますね」

そんな中田さんにとって青潮寮の子どもたちとは。

中田さん
「時には家族以上、家族よりも長い時間をここで過ごすので、私は家族みたいに思っています」

子どもたちも、もう1人の“お母さん”に感謝しているようです。

親元を離れて暮らす子ども達。その成長を見守る寮母の眼差しは、愛情にあふれていました。

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