「サミットの島」は要塞 お好み焼き店に全国から警官「大盛で」 広島1週間前ルポ

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開幕が迫っている。広島市内や宮島(廿日市市)には警備関係者が至る所に配備され、物々しい雰囲気に包まれている。交通規制で人出が減るのを見越して飲食店が休業を決めたり、事前に献血を呼びかけたりする動きも。開催1週間前の12日、緊張感が高まる街を記者がルポした。

グランドプリンスホテル広島周辺に集まる警察車両=12日午前10時17分、広島市南区(撮影・河合佑樹)

 外周3キロの島は「要塞(ようさい)」と化していた。主会場のグランドプリンスホテル広島がある南区元宇品町。メイン通りは100メートル間隔で警察官が目を光らせ、海沿いには機動隊の大型車両など約20台が塀のように列を成していた。高さ約3メートルの防護壁がホテル敷地を取り囲み、付近を私服警察官とおぼしきシャツにスラックス姿の集団が見回る。近くの女性(72)は「元宇品はこの1週間で一変した」と驚く。

 主会場に近い南区宇品地区のお好み焼き店は、通常より1時間早く仕込みに取りかかっていた。県外から来た警備関係者とみられる団体利用で普段の2~3倍の来店があるという。店長の岩井秀文さん(64)は「みんな麺ダブルを注文する。体格がいいからか、よく食べるねえ」と目を細める。

 警察車両は平和記念公園(中区)周辺など市中心部でも日に日に増え、岐阜、大阪、鹿児島など各地のパトカーも行き交う。「何の撮影ですか」「会社名は」。取材中、何度も職務質問された。遠方から駆けつけた「マニア」も。甲府市の大学院生(23)は「全国の車両が集結するめったにない機会」と盛んにレンズを向けていた。

 18~22日の交通規制に備える動きも慌ただしい。「ワタミの宅食」の中区の営業所は配達ルートの見直しに追われていた。中山順子所長(53)は「自力での買い物が難しい高齢者もいる。時間が遅くなっても届けたい」。ただ、元宇品町への配達は休む日もあり、困る人には事前に冷凍食品を届けるという。

 期間中の臨時休業の張り紙を出す飲食店も。平和記念公園近くの飲食店主(52)は「首相を狙う事件もあり、厳戒態勢だろう」とみて休業を決めた。タクシー乗り場で客待ち中の運転手榎猛さん(72)=安佐南区=は「観光客が動けないし、市民もむやみに外出しないだろう。規制中は休まざるをえない」とぼやいた。

 本通り商店街(中区)では、県赤十字血液センターの職員が「献血へのより一層のご協力が必要です」と記したプラカードを掲げた。18~22日に企業や商業施設に献血バスを派遣できないのを見越し、事前に約千人分を確保したいという。センター事業推進部の藤原優管理係長(35)は「血液は有効期限がある。サミット前までにぜひ協力を」と訴えた。

 首脳の訪問が予定される宮島でも張り詰めた空気が漂う。島内の土産店などによると、修学旅行客や外国人が宿泊キャンセルなどのトラブルを避けたためか、観光客は大型連休前に比べて大幅に減。その分、警備関係者の多さが際立つ。

 宮島小・中そばの海岸では、南区の元宇品町上空でも確認された、気球とみられる物体が浮かんでいた。土産物店を営む木村友香さん(54)は「気を使って出歩くのを控えてしまう。サミットが近づいていると実感します」と話していた。

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