柿の皮が牛のげっぷに含まれるメタンガスを減らす――。長野県畜産試験場は、県特産の「市田柿」の皮の粉末を餌にかけて牛に与えると、胃内部のメタンガス濃度が乳用牛で6分の1、肉用牛は4分の1以下に低下すると明らかにした。酪農肉用牛部は「温暖化対策だけでなく、加工段階で廃棄される柿皮の有効活用にもつながる」と期待する。
牛などの反すう動物の第1胃では微生物が繊維を消化し、動物にエネルギー源を供給している。同時に、メタン産生菌によってメタンガスも発生する。同試験場によると、その量は二酸化炭素(CO2)換算で、農林水産分野から排出される量の35%を占める。
同試験場は、渋柿に含まれているポリフェノールに、メタン産生菌の活動を抑えられる効果があることに着目。「市田柿」(干し柿)に加工する際に出る柿皮を使い、効果を調べることにした。
試験では、低温の水を使い一定時間、加圧して有効成分を抽出する色差分解(特許技術)で処理をし、乾燥した柿皮の粉末を作成。粉末(日量400グラム)を餌に振りかけたものを、乳用牛と肉用牛に4週間与えた。
乳用牛の給与前のメタンガス平均濃度は2万6866ppmだったが、4週目には4100ppmに減少。肉用牛も給与前の9076ppmから、2216ppmに減った。体重は微減したものの、血液数値の異常や乳量の変化はなかった。
今後は、「市田柿」の産地であるJAみなみ信州などと連携しながら、1日に与える量を減らしても効果があるのかどうかの研究を進めていく予定だ。