「ファミリーの絆」を知らないヴィン・ディーゼルが銀河をサバイブ!『リディック』シリーズ続編決定記念イッキ観

『ピッチブラック』©2000 Universal Studios. All Rights Reserved.

長袖厳禁「ノースリーブ」ユニバース

唐突だが、君はリディックを知っているか?
何? 知らない!?
そうか! なら生き残れないぜ、この銀河で!!

ヴィン・ディーゼルといえば、どの作品でも季節問わずタンクトップかノースリーブ着用が定番だ。巷でもノースリーブを着用している女性を見かける機会が多くなったが、これも恐らくヴィン・ディーゼル効果が一般に波及しているからだろう。

もう長袖すら厚着じゃねえかと思わせるほどのヴィンが生み出したノースリーブ・ユニバースの一つ、それが銀河を駆けるアウトローを演じた『リディック』シリーズだ!

知ってる人は知っている(知らない人は全然知らない)

『ピッチブラック』(2000年)から始まり、これまで『リディック』(2004年)『リディック:ギャラクシー・バトル』(2013年)と地味にシリーズが続いている。言わずと知れた『ワイルドスピード』『トリプルX』シリーズに隠れがちだが、ワル、坊主、邪眼持ち、常に黒いゴーグル装備と、他の作品にもクセでは負けていない。

ここ最近はファミリー路線をゴリ押ししているヴィンだが、本シリーズでは仲間を必要としない一匹狼を演じている。いわばヴィンの出世作の一つなわけだが、なんとCS映画専門チャンネル ムービープラスの5月特集にて『リディック』シリーズが放送されるらしいじゃないの!

というわけで今回は、知ってる人は知っている、知らない人は全然知らない『リディック』シリーズをザックリご紹介したい。

惚れざるを得ない豪傑キャラ誕生『ピッチブラック』

まず、シリーズのデビューを飾った第1作『ピッチブラック』。民間の宇宙船が人っ子一人いない辺境の惑星に墜落、9人の生存者の中には護送されていた札付きのワル=リディックがいた! というのが主なあらすじだ。

事故っただけでも不運な話だが、生活していた形跡はあるものの、どうやらこの惑星には本当に誰もいない! 途方に暮れる間もなく、22年に1度の皆既日食が暗闇に潜む獰猛なエイリアンを大量放出! 孤立無援の惑星を舞台に、生きるか死ぬかのサバイバルが展開される。

見ていて心配になるほどのタフっぷり

本作のキャッチコピーは「暗闇に何が見える」「暗闇、そこは奴ら(エイリアン)の世界」。――そんなSFホラーな世界観に、誰とも群れないタフなワル(ヴィン)が一匹、という作りが実に痺れる。

いかにも紫外線がエグそうな惑星なのに、もちろんリディックが着ているのはノースリーブだ!

中盤、どうやらヤベえエイリアンがいるらしい……早く脱出しねえと! と皆がドン引きしている中、リディックは動揺するどころか頭皮へのダメージをガン無視で宇宙船のドス黒いオイルを活用して剃髪!

こうしたタフガイ(しかもワル)はホラージャンルで死にがちというお約束もあり、あまりのタフっぷりは見ていて心配になる。

だが安心してほしい。暗闇を透視できるリディック・アイ(いま名づけました)、エイリアンの死角を突きナイフでタイマン、「あいつらに挨拶しないとな」からのお礼参り宇宙船バックファイアーなど、惚れるなというのが無理なほどの活躍を最後まで見せてくれる。

1作で終わらせるには勿体ないほどのキャラ作りに成功したわけだが、そんなファンの声に応えたのだろう。続編として、タイトルもズバリ『リディック』が製作決定したのだった。

ヴィン流“成りあがり”スペースオペラ『リディック』

前作に比べ予算も増えたのだろう。限定空間でのSFホラーから、まさかの寺沢武一的なスペースオペラに路線を変更!

賞金稼ぎや、宇宙規模のカルトな狂信集団ネクロモンガー(いい名前だ)を相手に、気がつけば矢沢の永ちゃんばりにリディックが成りあがっていく。

「悪魔か救世主か」「これが運命なら戦うしかない」「壮大な銀河年代記の幕が開く」というキャッチコピーどおり、実に景気の良さを感じさせる作品となった。

リディックの秘められし出生、物理攻撃の利かない大女優ジュディ・ディンチ、収監・即脱獄、ブラザー精神を発揮する前作生き残りの僧侶、高速ラスボス、リディックらしさ全開のサグいオチなどなど、日本の配給会社が「『スター・ウォーズ』以来のスペースオペラ!」とブチ上げるドカ盛りっぷりだった。

その後『リディック』シリーズはゲームにアニメにと展開したものの、ヴィンが他の作品や『ワイスピ』で忙しくなったこともあったのだろう、年代記の幕が開きっぱなしの状態が続くのであった。

けもフレお供に銀河サバイバル『リディック:ギャラクシー・バトル』

一部のファンも長年沈黙を守り続ける状況が続いたが、リディック本人を演じるヴィンは黙っていなかった。9年後、まさかの『リディック:ギャラクシー・バトル』が公開!

前作で風呂敷を広げ過ぎたのを反省したのか、思い出したかのように原点回帰! ネクロモンガーをファミリーとか言い出すのではないか? と心配になったが、本作ではリディックの「調子に乗り過ぎました」というナレーションが入ったかと思いきや、「またかよ!」と言いたくなる辺境の惑星に放置プレイ!

やっぱりそこは獰猛なエイリアンだらけだったわけだが、1作目の経験が活きたのだろう。拾ったけものフレンズをお供にサバイバルするのであった。

都落ちしようが、死んでも死なないド根性、ケンシロウ以来のムカつく奴への余命宣告、宇宙チョッパーでの爆走などなど、キャッチコピーの「銀河の果てで暴れようぜ!」に偽りはなく、観ているこちらも「暴れてますね!」と頷くしかない活躍を披露!

今回のムービープラスの放送枠には入っていないが、本作を製作するにあたり自宅を抵当に入れたというヴィンの気合がビシバシと感じられる作品に仕上がっている。

今こそ見習いたいリディック精神

犯罪者、反逆者、王様、放置プレイ……と、まさに山あり谷ありの波乱万丈な人生を歩んできたリディック。だが、地位や名誉がなかろうと、身体一つを頼りに泥水をすすってでも生き残る姿勢が3作ともキラリと光っている。

偉そうな奴には従わず、たまに漢気を発揮するアウトローという、中学二年生が痺れっぱなしなキャラ造形を笑う人間もいるかもしれない。だが“右に倣え”が良しとされる昨今だからこそ、このリディック精神は見習っていきたいところだ。SFというジャンルながら、現代を生きる我々がサバイブするヒントがあるかもしれない。

奇しくも先日、ヴィンから第4作目の製作が発表された『リディック』シリーズ。今回のムービープラス特集放送を機に、ぜひ再評価して頂きたい。

文:“DIE”suke

『ピッチブラック』『リディック』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「ピッチブラック イッキ観!」で2023年5~6月放送

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