高岡出身の落語家・三遊亭美よしさん 二つ目昇進「出番勝ち取る」

二つ目に昇進し、意気込みを語る三遊亭美よしさん

  ●地元を大事に、精進 「成長過程をみてほしい」

 高岡出身の落語家、三遊亭美よしさんが3月、前座から二つ目に昇進した。富山県出身の女性で初の二つ目となった美よしさんは「これからも地元を大事にしたい。応援してくれるファンに自分の成長過程を楽しんでもらえれば」とさらなる精進を誓った。

 落語と出合ったのは近畿大4年の時。大阪で初めて見た寄席で、初心者の自分とは違うタイミングで笑う常連客がなんとも不思議だった。足しげく通う中で、言葉の意味などを覚え、笑いのポイントが理解できた瞬間に「落語って面白い」と虜(とりこ)になった。

 大学卒業後も、東京でヨガインストラクターとして働きながら寄席通いは続いたが、山口に転勤になり、寄席に行けなくなった。「自分の人生には落語があった方がいい」。沸々と思いが湧き上がり、会社を辞めて落語家になる覚悟を決めた。

  ●出待ちで入門

 「落研」出身でもなく、コネもツテもない。そこで取った行動は「出待ち」。軽妙な語り口に引かれた三遊亭遊吉さんを浅草演芸ホールで待ち構え、弟子入りを直談判した。遊吉さんは「えー、俺」との反応だったが、履歴書を渡すと、熱意が伝わったのか面白がられたのか、面談の日が設定された。

 初高座は、不思議とプレッシャーを感じなかった。2019年3月、ご隠居と八五郎が掛け合う「道灌(どうかん)」を披露した。「せりふも飛ばなかったし、楽しかったですね」。舞台袖の先輩から「度胸がある」とほめられ、「頑張ろうと思えた瞬間だった」。

 それから4年。今年3月1日から4月5日まで、二つ目昇進のお披露目興行として都内4会場の寄席に出続けた。祝福ムードの中での出演は特別な体験となったが、今後は違う。興行主から呼ばれない限り、寄席に出ることはない。実力勝負の世界である。

 「前座時代は毎日寄席に行かなければならないという拘束があったが、その分不安を感じることはなかった。しっかりと稽古をして、出番を勝ち取らないと」

  ●郷土愛の強さ実感

 お披露目興行では、富山出身という観客から「おめでとう」「前座時代から見ていました」と声を掛けられ、ありがたかった。「応援の声を聞くたびに、郷土愛の強さを実感してうれしくなる」。立川志の輔さんからも「同じ富山県出身として頑張ろう」と激励された。

 「これからも皆さんに末永く応援されるよう頑張る」。迷いなく「落語道」を突き進む。

 

 ★さんゆうてい・みよし 高岡市出身。古府小、伏木中、高岡南高、近畿大を卒業後、ヨガインストラクターを経て2018年9月に三遊亭遊吉に入門。落語芸術協会所属。28歳。

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