「歴史的価値極めて高い」 「妙成寺を国宝に」シンポ

妙成寺の歴史的価値について意見を交わすパネリスト=北國新聞赤羽ホール

 一般財団法人北國総合研究所のシンポジウム「妙成寺を国宝に」(北國新聞社後援)は13日、金沢市の北國新聞赤羽ホールで開かれ、約300人が石川を代表する古刹(こさつ)の成り立ちや建築技法に理解を深めた。パネル討論では建築学や仏教学の観点から「歴史的価値が極めて高い」との意見が相次ぎ、参加者は建造物として県内初の国宝指定に期待を寄せた。

 羽咋市滝谷町の日蓮宗妙成寺は五重塔など10棟の重要文化財がある。北國総研が事務局を務め、2017年から3年がかりで有識者らによる「妙成寺文化財総合調査報告書」を作成し、文化庁に提出した。

 基調講演で名古屋工業大の麓(ふもと)和善名誉教授は、本堂と祖師堂、三光堂が一直線に並ぶ三堂並置(さんどうへいち)について、軒や屋根の高さをそろえるなど、正面から見た際の美しさを考慮していると指摘。加賀藩前田家に仕えた建仁寺流の大工、坂上嘉紹の一族が手掛けたとし「工法やデザインもそれぞれ違う。当時の技術の粋が尽くされている」と強調した。五重塔も古来の技法である積み上げ式を用いており、「正統性と斬新さを併せ持ち、建築史的価値も大変高い」とした。

 パネル討論は麓名誉教授を含め5人が登壇した。コーディネーターの東四柳史明金沢学院大名誉教授は、3代藩主利常の母寿福院と妙成寺の結びつきを紹介し「建造物の多くは寿福院のきょうだいやおいが住職を務めていた時期に前田家の潤沢な資金で建てられた」と話した。

  ●三堂並置は現存で最古

 身延山大(山梨県)の望月真澄(しんちょう)教授は、三堂並置は日蓮宗の教義に基づく代表的な伽藍(がらん)配置とし「現存しているものでは最も古く、完全な形で残っている。仏教学の見地からも極めて貴重だ」と評価した。

 建築装飾技術史研究所(岩手県)の窪寺茂所長は本堂や祖師堂の彫刻などに注目。当時最先端の漆技法が用いられている一方、デザインのモチーフに室町期の特徴が見られると語り、「新旧の技術や知識が融合し、他の寺院にない個性がある」と説明した。

 金沢工大の山崎幹泰教授は修繕を重ねてきた歴史について調査結果を発表した。過去に書院の一部を取り壊し、屋根をこけら葺(ぶ)きから瓦に変えるといった改修が行われたことがあったとし、「昭和から平成にかけて元の姿に戻す動きがあり、書院も建築当時の形に近い」と指摘した。

 シンポジウムには金沢学院大の学生140人も参加した。文学部2年の川西龍(りょう)さん(19)は「こんなすごい寺が石川にあることを知らなかった。ぜひ国宝になってほしい」と声を弾ませた。

 岸博一羽咋市長があいさつした。シンポジウムは6月17日にコスモアイル羽咋でも開催する。

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