自転車ヘルメット着用率アップは女性心理にカギが!崩したくないこだわり「トップ」とは?

湿気と暑さ、ヘルメット着用には辛い季節が到来

4月1日から「努力義務」化された自転車運転時のヘルメット着用。被らなくても罰則はないため、今回の道交法改正の実効性を疑問視する声もあるものの、自転車用品店やネットショップではヘルメットの品薄状態が続くなど、私たちにとって身近で気がかりな問題になっています。特に蒸し暑い夏を前に、女性の間でヘルメット着用に踏み出せないある事情が浮き彫りになっています。

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女性にはヘルメット装着をためらうある理由が…

着用率No.1は愛媛県 きっかけは相次いだ死亡事故

民間団体の調査によると、全国でヘルメットの着用率が一番高いのは愛媛県だということです。

「高校生による死亡事故が相次いだので、2015年に県内の高校生の着用が義務化されたことが着用率1番の主な理由です。地元では『ノーヘル=不良』というイメージが定着していました」。静岡大学に通う岑永知早紀さん(21)は、愛媛県でヘルメットが義務化された中高時代を過ごしました。大学に進学した当初、静岡市内で見かけるノーヘルの中高生の多さにびっくりしたそうです。

ノーヘルの解放感に勝てず…反省し購入に前向き

しかし、そんな岑永さんも大学生活で一度もヘルメットを使わないまま、4年生になってしまったと告白します。「静岡で初めてヘルメットのない自転車の開放感を味わってしまって。さらにメークや、髪型もセットするようになったので。容姿と安全を天秤に掛けはいけないとは思うのですが」。実家から持ってきた高校生時代のヘルメットは自宅に送り返してしまったとのこと。

キャンパス内などでも、ヘルメット姿の学生を見ることはほとんどないそうです。通学、アルバイトと自転車は岑永さんの生活に不可欠です。ニュースで盛んにヘルメットの話題が取り上げられるため「自分ごととして捉えて購入を検討します」と意識を新たにしているようです。

自転車は必需品。「努力義務」どう向き合ったら

「去年くらいから自転車の警察官がヘルメットをかぶり始めたので『なんでだろう』と思っていました」。静岡市の主婦、長谷川由理さんは静岡市駿河区の美容室でブローされながら、こう振り返ります。「静岡市の市街地は平坦。車で移動するよりも速く目的地に着くこともあって、欠かせない交通手段なので、余計に今回の『努力義務』の意味を測りかねるんですよね。もちろん命に関わるということは分かっていますけど」。

長谷川さんは、当面は様子見とのことですが、色やデザインに関して服装とのマッチングや価格など気になる部分が多いといいます。「年齢や自転車のタイプによっても似合う形は違うと思うので選べる幅が広がるといいですね」と期待します。

ヘアスタイルの要「トップ」を守れ!心理理解して商品開発を

美容室「パディントン」の加藤淳平オーナー(40)は4月以降、女性からヘアスタイルについての相談が多くなったと話します。

「女性のカットはどの角度から見てもひし形になるようにするのが基本です。頭の上(トップ)を高くし、そこから徐々に広げ、あごの辺りで再び狭くなるようにデザインすることで『お鉢が張っている』アジア人の骨格でも美しいシルエットが生まれるからです。

ヘルメットをかぶると最重要ポイントのトップをつぶしてしまい、ヘアスタイルが台無しになります。ヘアスタイルはファッション全体の要なので、その日のコーディネートが破綻する事になります。それが理由で着用に二の足を踏んでしまうらしく、いっそのこと車通勤に戻ろうか、という話も聞きます」

さらにこれからの季節、汗でファンデーションがヘルメットの内側に移ってしまったり、臭いが気になってしまったりと、身だしなみや清潔感を求められる職場で働く女性の間では自転車の利用をためらう動きは拡大しています。加藤さんは「男性が思う以上にヘアスタイルは女性の心理に大きく影響を及ぼします。ここを理解して『トップが崩れにくい』ことにポイントを置いたヘルメットやスタイリング剤の開発が盛んになれば女性の着用率は上がるはずです」と力説しています。

本末転倒、海外ではヘルメット義務化で自転車利用者激減

二酸化炭素排出削減を、と国民の自転車利用を後押ししたオーストラリアやニュージーランドはヘルメット着用の完全義務化にも踏み切りました。すると、自転車の利用率は激減してしまいました。ニュージランドで調査した報告によると1989-1990年、2006-2009年(義務化の前後期間)の調査で、一人当たりの平均自転車利用時間は51%減少しました。調査では「ヘルメット法はサイクリングの促進、安全、健康、事故補償、環境問題、市民的自由の面で失敗していることがった」とヘルメット義務化がもたらしたデメリットを指摘しています(Evaluation of New Zealand's bicycle helmet law.Colin F Clarke,2012 Feb 10 )

今回の”努力”義務という、一見中途半端な法改正も、着用を強く促したいものの、自転車の利用を過度に下げないための「激変緩和措置」の意図も見え隠れします。

有効性理解して、着用推進を社会全体で

自転車の利用をめぐっては、2008年に「自転車は原則車道の左端を走行すること」と改め確認されて以降、自動車との共存を目指し、さまざまな取り組みが行われています。「県サイクルスポーツの聖地創造会議」は、高校生の自転車による事故減少を目指して、ブリヂストンと協業し「自転車安全利用五則」を記した啓発ポスターを県内の高校に配布を始めました。

同会議「裾野拡大・安全部会」の木部一部会長は「自転車事故の大半は出合い頭の場合が8割といわれています。その中でも歩道、車道に関わらず、自転車の右側通行が事故発生の確率を上げています。自転車事故が起きるメカニズムを理解して、多くの人が頭部を守るためのヘルメットの着用の有効性に気づいてくれれば」と話しています。

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