初心者ハンターと農家をマッチング 小田急電鉄の新事業が”快走中”

捕獲したイノシシを確認するハンターバンクの参加者ら(神奈川県小田原市で=小田急電鉄提供)

一から技術指導 講習に100人集まる 東京都と神奈川県で鉄道を運営する小田急電鉄は、狩猟に興味を持つ人や初心者と、獣害に悩む農林業者をつなぐ事業「ハンターバンク」を立ち上げた。2022年11月から本格展開し、既に20頭以上のイノシシを捕獲した。まず神奈川県小田原市で始めており、今後拡大も検討する。

同社にとっては沿線の価値向上や動物との接触事故の防止が狙い。登録した会員が地元の狩猟者や農家の協力を得て、狩猟スキルを学ぶ。狩猟免許を取得したが経験の浅い人も対象とする。同社社員で統括リーダーを務める有田一貴さん(31)が19年ごろから事業化を進めてきた。

事業には3種類のコースがある。3カ月の入門プランは5人でチームを組み、わなの設置や見回り、止め刺しや解体をベテラン狩猟者の指導の下で体験する。狩猟に必要な道具は同社が貸し出し、わなには動体検知カメラを取り付けて捕獲をサポートする。費用は1人月額1万円。4期開催し、首都圏を中心に約100人が参加した。さらに狩猟を学びたい人向けのコースも用意する。

事業には小田原市やJAかながわ西湘が協力する。3者で説明会を開き、わな設置や見回りを引き受ける農家を募った。7戸の農家で事業を始め、候補先の農家も約30戸ある。

事業に協力する同市の鈴木農人さん(50)は、2基の箱わなを設置。1・2ヘクタールでシキミやサカキを育てるが、6、7年前から石垣や畑を荒らされる被害に悩まされてきた。今年は既に10頭以上のイノシシを捕獲し、「被害軽減だけでなく、若いハンターとの交流も楽しみ」と話す。

市は捕獲した動物の解体場所を提供する。市環境政策課は「参加者から移住の相談もあった。被害減少に加え、交流人口の増加に期待したい」とする。有田リーダーは「参加を機に狩猟免許を取得した人もいて、裾野が広がってきた」と手応えを口にする。

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