社説:学校図書館 京滋の自治体、実態の点検を

 通っている学校によって、子どもの読書環境に格差が生じてはなるまい。

 共同通信の全国調査で、校内に図書室を設置していなかったり、資料の整備が不十分だったりする学校があることが明らかになった。

 学校図書館は、学校教育に欠かせない基礎的な設備として、公立私立を問わず、小中高校と特別支援学校に設けることが法律で定められている。

 学習指導要領も、児童生徒の深い学びの実現に向けた授業改善に、学校図書館を利用することを求めている。

 文部科学省は、学校図書館の蔵書数などは調査しているものの、設置が大前提で、その実態を把握していなかったという。子どもの主体的に学ぶ権利が侵害されているとの指摘もある。国はチェック体制を強化し、読書環境の格差是正に取り組まなければならない。

 図書室がなかったり、図書の更新が行われていなかったりした学校は、少人数校であることや、図書より他の物品購入を優先したことなどをその理由に挙げたという。学校図書館の位置付けが軽視され、後回しにされている実情が垣間見える。

 学校図書館の充実に向け、文科省は地方交付税に図書購入費などを盛り込んでおり、2022年度から26年度は毎年度480億円を配分する。

 だが、使い道は限定されておらず、実際に図書の購入に充てるかは自治体の裁量に委ねられている。

 深刻化する財政難で、目的通りに使っていない市町村が多いことは、かねて指摘されてきた。図書整備の支援団体などからは、子どもへの投資が届かないのは大人の怠慢との声も上がっている。

 学級数など学校の規模に見合った蔵書数の目標が達成されているかに関する21年の文科省調査によると、公立小の達成率は京都府が70.4%で全国29位、滋賀県は49.5%で42位だった。公立中では京都が41.0%で43位、滋賀は29.2%で全国最低になっている。

 京滋の自治体は、子どもの読書環境について遅れた現状を直視してもらいたい。

 費用と併せて必要になるのが、図書を活用した子どもの学びを支える人の手当てだろう。多忙な学校現場からはマンパワーの不足もあり、学校だけの努力には限界があるとの意見が出ている。

 石川県白山市では、学校図書館支援センターが拠点となり、市立図書館や学校間で蔵書を貸し借りする仕組みを構築している。市立館や学校の司書がノウハウも交換し、読書環境を整えている先進例といえる。

 学校図書館の実態は校外からは見えにくい。地域住民ら外部の知恵や力を積極的に求めていくことも、活性化の有効な手法になるのではないか。

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