強いロバンペラが帰ってきた。王者が今季初優勝でランキング首位に浮上/WRC第5戦ポルトガル

 5月14日、WRC世界ラリー選手権第5戦『ラリー・ポルトガル』の競技最終日はSS16“パレデス”、SS17“ファフェ1”、SS18“カベセイラス・デ・バスト”、そしてパワーステージに設定されたSS19“ファフェ2”という計4本のスペシャルステージが行われ、デイ1から首位を守ってきたTOYOTA GAZOO Racing WRTのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が優勝。大会2連覇を果たすとともに、2023年シーズン初勝利を挙げた。

 チームメイトのセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)や、エルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が勝利を収めるなか、表彰台獲得こそあれど今季ここまで優勝のなかった史上最年少チャンピオンが、ようやくポディウムの頂点に帰ってきた。

 週末を通して好天に恵まれたラリー・ポルトガルの競技初日、金曜日は日本人ラリードライバー勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)がマシントラブルによりデイリタイアとなったほか、序盤で首位に立ったオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)のパンクによる後退、エバンスのクラッシュなど波乱の展開に。そんななかロバンペラは出走順で不利な立場にいたにもかかわらずSS5でベストタイムを記録し、総合でも首位に浮上する。

 総合2番手のダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)と10.8秒差で迎えたデイ2では、オープニングのSS9から午後の1本目SS12まで、4連続ステージベストを含む7SS中5本のSSを制す驚速ぶりを披露し、後続とのギャップを一気に1分近い57.5秒にまで拡げてみせた。

 王者は、ソルドとの間に大きなタイム差があることからペースを落とすかに思われた14日(日)のデイ3も手を緩めず。SS16ではこのステージを制した勝田に次ぐ2番手タイム、続くSS17では今大会9回目のベストタイムをマークした。

 SS18はパワーステージに向けてタイヤを温存するためか、ソルドより10秒ほど遅いタイムでステージを終えたロバンペラ。迎えた最終SS19では目論見どおり最速タイムを記録し、優勝の25ポイントにボーナスの5点を加え“フルポイントマーク”でのシーズン初優勝を飾った。この結果、選手権ランキングでは98ポイントで首位に立っている。

 前日からヒョンデ勢の3台によって争われていた表彰台を巡る攻防は、日曜日の朝を総合3番手で迎えたティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)がターボトラブルでスローダウンを余儀なくされたことで決着した。

2位となったダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル
パワーステージで2番手タイムをマークしたオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル

■WRC2クラスはペナルティとアクシデントが重なり大接戦に

 エサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)はチームメイトの後退によって総合4番手から3番手に浮上すると、初日から2番手を走り続ける“仕事人”ソルドとともにダブル表彰台を韓国のメーカーにもたらしている。ヌービルはスピードが出ないマシンで4本のステージを走破し総合5位でラリーを完走した。ラッピとヌービルの間には初日に遅れを取ったタナクが入っている。

 その後方ではWRC2クラスの上位陣が総合トップ8圏内に進出。最終日は、禁止されている展示走行いわゆる“ドーナツ”を行ったとして1分間のタイムペナルティを受け、クラス首位から2番手に後退したオリバー・ソルベルグと、反対に首位に浮上したガス・グリーンスミスによる“シュコダ・ファビアRSラリー2対決”に注目が集まった。

 2台のタイム差はSS16開始時点で24.6秒あったため、ソルベルグの再逆転は難しいと思われた。しかし、グリーンスミスがSS17でフロントバンパーを失いパワーステアリングにも異常をきたしたことで状況は一変する。このステージの終わりで15.5秒となった両者の差はSS18終了時点で8.7秒に。最終パワーステージでの逆転劇の可能性が高まった。

 ライバルに先んじて出走したソルベルグは、クラス最速タイムでSS19をフィニッシュ。対するグリーンスミスはスプリット1で3.5秒おくれ、スプリット2では6.6秒のプラス表示に。注目のフィニッシュタイムはプラス7.5秒。この結果、グリーンスミスがわずか1.2秒差でリードの守りきり、ラリー・メキシコ以来となる今季2勝目を飾った。3位表彰台はアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が獲得。シュコダ勢がワン・ツー・スリー・フィニッシュを達成している。

 デイ2で再出走を果たした勝田は、ワークス参戦2戦目となった今大会、最後までラリーを走りきりマニュファクチャラーポイント8点をチームに持ち帰った。また、パワーステージではステージ4番手タイムを記録してボーナスの2ポイントをこれに加えている。

 WRCの次戦は6月1~4日、地中海に浮かぶサルディニア島を舞台に行われる第6戦ラリー・イタリア・サルディニアだ。

3位表彰台を獲得したエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル
パワーステージ4番手でボーナスの2ポイントを獲得した勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル
ファンを思う行動が仇となりペナルティで勝利を失ってしまったオリバー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRSラリー2) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル
辛くも勝利を掴んだガス・グリーンスミス(シュコダ・ファビアRSラリー2) 2023年WRC第5戦ラリー・ポルトガル

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