左右の余裕は10cm… “激せま”路線を行くバス 運転手の「スゴ技」とは!?

皆さんはバスに乗っている時、「こんな大きな車体で狭い道路を走るなんてすごい!」…と感じたことはありませんか。乗用車同士のすれ違いも難しい道を行く路線バス。運転手の「すご技」を見せてもらいました。

伊予鉄バス「三津・吉田線」。愛媛県松山市中心部と三津港を結ぶ路線で、そのほとんどがとっても狭い道路なんです。

このうち特に「空港通り」と並行する市道・新玉49号線、いわゆる「初代の空港通り」は、今から約60年前に開通した道路とあって、とにかく狭い!

実際に、狭そうな場所の道幅を計ってみると、白線の内側で2m46cm。

さらに、住宅の多い地域を走る道路なので、通勤時間帯には渋滞も。交通量も多く、バスが走るにはとっても難易度の高そうな路線です。

利用者の女性
「ここの道を走る運転手さんは、上手な人が運転すると聞きました」

“激せま”道路をどんどん進む… そのスゴ技とは

運転手の橋本勝則(かつのり)さんです。バスに乗り17年。数少ない「指導運転士」の肩書きを持つベテランです。

今回特別に、橋本さんの案内で「三津・吉田線」を走るバスに乗せてもらいました。

使われている車両はこちら。装備もいろいろで、なんだか乗用車とは勝手が違いそうです。

いよいよ、狭い道を走り抜ける「すご技」拝見です。

街の中心部から三津港に向かうバスは、JR予讃線の踏み切りを通過。ここから先は、センターラインが無くなり、道幅は徐々に狭く。見通しも悪くなってきます。

信号待ちの停車もご覧の通り。車体の左側に、余裕はほとんどありません。

空港方面へ向けて松山環状線を超え、道路はどんどん狭くなります。この日、天気は下り坂。雨が降り出してきました。

立ち並ぶ家、外壁、電柱…。大きなバスの車内から眺めていると、すごい圧迫感ですが…

運転手 橋本勝則さん
「車の大きさは特に気にならないですね。大きすぎることもなく、特に小さいわけでもないんですけど…」

運転席から見える7つのミラーと、道路に設置されているカーブミラーを駆使して、対向車をかわしながら慎重に。けれども時刻表通り、着実に進んで行きます。

と、その時。反対からも路線バスがきました。停留所に止まっていて、そのバスを追い越す車が次々。さらには、歩行者と自転車の姿も見えます。道路の両側は、蓋がされていない側溝も。これは緊張です。

バスは少し広くなった場所に停車して、無事にすれ違いました。

運転手 橋本勝則さん
「離合できる場所を必ず頭に入れるようにしています」

バス1台がやっとの道幅…どう進むのか!?

ここから先、全く見通しの効かない、カーブが連続する場所に入ります。運転手の橋本さんも“難所”と話します。

バス1台がやっとの道幅ですが、対向車です。

わずかな退避スペースを見つけ…、かわしました。お見事です。

さらに、バス同士のすれ違いが不可能な区間では、対向するバスがいないことを無線で確認しながら進みます。

この辺りの道幅は、白線の内側で約2.5メートル。バスの幅が2.3メートルなので、左右の余裕は、実に10センチ程度ということに。まさに「すご技」です。

「初代空港通り」を走ることおよそ20分。バスは無事、大通りに抜けました。

記者「普通車でも走るのが難しい道路では?」
運転手「そうですね。プライベートでは私は行かないですね(笑)」

橋本さんに、運転する上で心掛けていることを聞いてみました。

「まずは広いところで待つ。それがもう基本。相手を待つという優しさがないと」

それは決して特別なことではなく、われわれ一般ドライバーにとっても大切な“思いやりの心”でした。

住宅が密集する狭い道路を、1日に26往復する伊予鉄バス三津・吉田線。1年間に約21万人が利用する路線です。

利用者の女性
「1週間に1回は必ず乗ります。今日はお買い物。安心して乗れます」
利用者の児童
「すごいなって思います。塾行くまでがうきうきする。どんどん景色が変わっていくのが楽しいです」

多くの人たちにとって、文字通り「身近な存在」の路線バスは、運転手のすご技と、利用する人たち、見守る人たちによって支えられながら、今日も走り続けます。

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