平成新山「火山活動は静穏」 九大などが防災視察登山

山頂で溶岩ドームの現状を説明する松島教授(中央)=平成新山

 九州大地震火山観測研究センター(島原市)や長崎県島原市などは15日、雲仙・普賢岳の噴火で形成された溶岩ドーム「平成新山」(1483メートル)の現状を調べるため防災視察登山を行った。同大の松島健教授(63)は「火山活動は静穏でマグマ噴火の兆候は見られない」との見解を示した上で「水蒸気爆発や地震などによる崩落には引き続き注意が必要」と述べた。
 ドームは1990年に始まった噴火で、火口付近に溶岩が堆積と崩壊を繰り返し形成。91年6月3日の大火砕流では43人が犠牲になった。96年に噴火活動の終息宣言が出たが、ドームが不安定な状態で残っている。防災視察登山は95年から毎年春秋に実施。今回は行政や消防、警察、報道の関係者ら計79人が警戒区域内に入った。
 山頂付近の複数箇所で噴気温度を計測。95年時点で700度あったのが、2010年ごろから100度を下回り、今回は約90度だった。松島教授は「高地での水の沸点に当たる温度。ほとんど水蒸気とみられる」と話した。
 国土交通省雲仙砂防管理センター(同市)によると、ドームは自らの重さで97年の計測開始から25年間で計1.42メートル同市側にずり下がった。防災視察登山に同行した久保世紀センター長は「部分的な崩壊は水無川の砂防堰(えん)堤で受け止められる」と説明する一方、大規模な崩壊が起きた場合は下流の住宅地に達する恐れがあるとして「自治体と協力して住民を素早く避難させる必要がある」と話した。

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