<金口木舌>ごみの国籍

 10日夜、沖縄上空に「大火球」が現れた。強い光を放ちながらゆっくりと流れる様子に多くの県民が驚いた。火球は流れ星の一種だが、願い事を唱える余裕もなかったようだ

▼同時間帯、中国が昨年11月に打ち上げたロケットの一部が落下するとの情報があった。上空約100キロで大気とぶつかり、燃えて発光したのが、今回の火球の正体とみられる

▼SNSでは「中国」の2文字に反応するコメントも多かった。軍備強化を進める大国への反感、歴史認識を巡る日中の関係悪化からか、火球の報道は反中感情を引き起こすネタにもなった

▼1957年のスプートニク1号以来、世界各国は宇宙利用を進め、これまでに1.3万機の人工衛星が打ち上げられた。ロケットや人工衛星の部品などが宇宙空間に残り、スペースデブリ(宇宙ごみ)も増加した。火球となる人工物は多国籍だ

▼92年、スペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士の毛利衛さんは「宇宙から国境は見えません」と語った。われわれはいま、地球から宇宙を見上げ、ごみの国籍を気にしている。

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