いま大注目のジャンル“オートフィクション”作品とは? 話題沸騰『aftersun/アフターサン』ほか押さえておきたい新作映画4選

『aftersun/アフターサン』 © Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

世界中の映画祭を席巻した注目作

初長編作品で英国アカデミー賞英国新人賞を受賞、世界のメディアが絶賛し本年度ベストムービーに選出した注目作『aftersun/アフターサン』が、2023年5月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほかにて全国公開される。

11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る本作。2022年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び、話題作を次々と手掛けるスタジオA24が北米配給権を獲得。昨年末には複数の海外メディアが<ベストムービー>に挙げ、毎年映画ファンが注目するオバマ元大統領のお気に入り映画にも選出されるなど、本年度を代表する1本となった。

その波はアワードシーズンを迎えてなおも押し寄せ、父親を演じたポール・メスカルがアカデミー賞主演男優賞ノミネートを果たす。監督・脚本は、瑞々しい感性で長編デビューを飾ったスコットランド出身、1987年生まれの新星シャーロット・ウェルズ。ソフィ役には、半年にわたるオーディションで800人の中から選ばれた新人フランキー・コリオ。愛情深くも繊細なカラムには、ドラマ『ノーマル・ピープル』でブレイクしたポール・メスカルが抜擢された。また、第89回アカデミー賞作品賞など3冠に輝いた『ムーンライト』(A24製作)のバリー・ジェンキンスが脚本に惚れこみ、プロデューサーに名乗りを上げている。

いま大ブーム中の“オートフィクション作品”とは?

シャーロット・ウェルズ初の長編映画となる本作は現在、世界中でその鮮烈な魅力を存分に発揮している。本作は、彼女が幼い頃に父親と実際に過ごした夏休みの思い出が物語のベースとなっているが、近年ベテランから若手まで様々な監督たちが自身の人生を半自伝的に描いた作品が続々と公開されている。

この半自伝的な手法を「オートフィクション」と呼ぶが、どの作品も監督自身の体験を描いているからこそ、よりリアリティを感じさせる演出で観客たちの心をダイレクトに響かせるのだろう。

ということで今回は、そんなオートフィクション作品群から、いま押さえておきたい4作品を厳選紹介する。

注目のオートフィクション作品4選

『aftersun/アフターサン』2023年5月26日(金)公開

20年前のビデオテープに残る、11歳の私と父とのまばゆい数日間。
―――あの時、あなたの心を知ることができたなら。

思春期真っただ中のソフィ(フランキー・コリオ)は、離れて暮らす若き父・カラム(ポール・メスカル)とトルコのひなびたリゾート地にやってきた。輝く太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、親密な時間をともにする。20年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、ローファイな映像のなかに大好きだった父の、当時は知らなかった一面を見出してゆく……。

陽光注ぐリゾート、きらきら揺れる海、今も残る、アフターサン(日焼け後)クリームの手触り―――すべてがまぶしかった。これは、誰の心にも在る、大切な人との大切な記憶の物語。

監督・脚本:シャーロット・ウェルズ(初長編監督作品)出演:ポール・メスカル(ドラマ「ノーマル・ピープル」『ロスト・ドーター』)、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホールプロデューサー:バリー・ジェンキンス(『ムーンライト』)ほか

『インスペクション ここで生きる』2023年8月4日(金)公開

ゲイであることで母に捨てられ、16歳でホームレスになった青年――。海兵隊在職中に映像記録担当としてキャリアを始めたエレガンス・ブラットン監督の長編デビュー作にして、彼の体験に基づく実話。

ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間ホームレス生活を送っていた青年・フレンチ(ジェレミー・ポープ)。どこにも居場所を許されず、自らの存在意義を追い求める彼は、生きるためのたったひとつの選択肢と信じて海兵隊への入隊を志願する。だが、訓練初日から教官の過酷なしごきに遭い、さらにゲイであることが周囲に知れ渡るや否や激しい差別にさらされてしまい……。しかし、理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらもその都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かうフレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。

主人公であるフレンチを演じたジェレミー・ポープは本作で第80回ゴールデングローブ賞主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネート。また、音楽は「21世紀の最重要バンド」と評されるアニマル・コレクティヴが担当。逆境に屈せず前を向く主人公フレンチの姿をエモーショナルに彩っている。

監督:エレガンス・ブラットン出演:ジェレミー・ポープ、ガブリエル・ユニオン、ラウル・カスティーヨ、マコール・ロンバルディ、アーロン・ドミンゲス、ボキーム・ウッドバイン

『フェイブルマンズ』(全国公開中)

50年にわたるキャリアの中で『ジョーズ』から『E.T.』、『ジュラシック・パーク』まで、史上最も愛され、変幻自在な数々の作品を世界に送り出してきたスティーヴン・スピルバーグが、“映画監督”になる夢を叶えた自身の原体験を描く。

初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年。やがて8ミリカメラを手にした彼は家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。そんなサミーを芸術家の母は応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。そんな中、一家は西部へと引っ越し、そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく――。

監督:スティーヴン・スピルバーグ出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル

『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』(全国公開中)

『エヴァの告白』『アド・アストラ』のジェームズ・グレイが監督・脚本を手がけ、自身の少年時代の実体験をもとに撮りあげた人間ドラマ。

1980年代、ニューヨーク。ユダヤ系アメリカ人の中流家庭の末っ子ポールは、公立学校に通う12歳。PTA会長を務める教育熱心な母エスター、働き者でユーモラスな父アーヴィング、私立学校に通う優秀な兄テッドと何不自由のない生活を送っていた。しかしポールは、クラス一の問題児である黒人生徒ジョニーと親しくなったことで、複雑な社会情勢が突きつける本当の逆境を知ることになる――。

監督:ジェームズ・グレイ出演:アン・ハサウェイ、ジェレミー・ストロング、バンクス・レペタ、アンソニー・ホプキンス

© ディスカバリー・ジャパン株式会社