謎多きコヤスノキ、かれんに 牧野富太郎の発表で注目、兵庫県南西部と岡山県東南部にだけ自生

小さな黄色い花が密集して咲くコヤスノキ=コヤスの杜庭園

 かつて「幻の木」とされ、たつの市の博物学者が発見したコヤスノキが、兵庫県宍粟市山崎町上比地の私設「コヤスの杜庭園」で見頃を迎えている。直径1センチほどの黄色い花が密集し、甘い匂いを漂わせている。5月末まで楽しめるという。

 コヤスノキはトベラ科の常緑性低木で、高さは1~4メートル。国内では兵庫県南西部と岡山県東南部に自生し、環境省の準絶滅危惧種に指定されている。特定の地域のみ生育する理由や名前の由来は不明で、謎の多い樹木という。

 江戸時代の草木図説に描かれていたが、存在が確認されず、「幻の木」とされていた。1900年、たつの市の博物学者の大上宇市(おおうえういち)(1865~1941年)が発見し、「日本の植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎(1862~1957年)が発表して注目された。

 同庭園は、元造園業の広坂重幸さん(74)が自宅近くの竹やぶや畑などに手を入れて開設。約2300平方メートルで多彩な樹木や山野草を育てるほか、灯籠や石庭などを整備する。

 コヤスノキは約20年前から種をまいて育て、約250本に上る。小さな花が集まり、外向きに開いた花びらが愛らしく、かんきつ系に似た甘い香りが特徴だ。

 広坂さんは「謎の多さにロマンを感じる。優しい花の姿を見てほしい」と呼びかける。

 午前7時~午後7時。入園無料。無休。同園TEL090.8982.7476 (村上晃宏)

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