【認定薬局Q&A改正】都薬・永田会長に聞く/ 国と現場、「視点は異なっている」

【2023.05.17配信】厚生労働省は3月31日、「地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局の認定基準に関するQ&Aについて」を一部改正した。これまで定例会見の場などで認定薬局の運用に関して発言することも多かった東京都薬剤師会(都薬)会長の永田泰造氏に改正への見解を聞いた。

永田会長は、地域包括ケアシステムの構築に資する「会議」に関わる事項の改正等については、これまでの都薬の考えが一定程度理解されたなどと評価する一方で、「現場との視点が異なっている」という根本的な問題については必ずしも解消されたわけではないとの考えを示した。

永田会長の指摘する国と薬局の現場で異なっている視点とは、端的にいえば「地域での連携のためにある」という地域連携薬局のそもそもの概念への捉え方だ。具体的には医療機関に勤務する薬剤師等に対して報告した「実績」については「何件」と数値目標を明示しているのに対し、例えば「医薬品の他の薬局開設者の薬局に提供する体制」などについては、提供実績までは求めていない。
こうした基準に対して、永田会長は、どちらがより地域での医療連携という概念に則したものなのか、という疑問を持っている。報告など「実績」に関しては調剤報酬上で算定もできる項目も多い。算定を目指した結果として取得できる項目と、地域における医薬品融通といった地域で頼りにされることのどちらに重きを置くべきなのか、という観点で問題を提起する。
地域連携薬局の申請書類にも「過去1年間の医薬品提供の実績」を記入する項目があるが、それは「参考」の欄であり、たとえ「0回」であっても、特にそれに対して申請を受ける都道府県も何ら“お咎め”ができるものではない。

「地域の調剤応需体制資料」は薬剤師会に入っていなくて分かるのか?

永田会長がほかにも認定薬局に関して感じていることとして、申請書類に、「地域の調剤応需体制がわかる資料を添付」とあることに関して「薬剤師会に入っていなくて分かるのか?」ということがある。これは「休日及び夜間の調剤応需体制」に関連する事項であり、参考として「過去1年間の調剤の実績」を記入することになっている。地域では薬剤師会を中心として地域で休日や夜間の体制を整備していることが多い。

こうした意見は薬剤師会関係者が発言者である“エゴ”なのだろうか。地域で連携することで休日・夜間にも医薬品が入手でき、医薬品の不足時にも薬局連携から対応しやすくしてもらうという地域住民におけるメリットがあるのではないか。もしもそうであるなら、地域連携薬局が地域での連携強化のために地域の薬剤師会に加入することは自然な流れのようにも感じる。今回の流通不足問題でも在庫薬の周知などでは地域の薬剤師会を通じた手法も取り上げられている。

一方、時々、大手チェーン薬局からは「薬剤師会に参加することは薬剤師会自体からも求められていない」という声を聞くことがある。これについて永田会長は「そんなことはない」と否定する。「地域では、個店であってもチェーンであっても勤務薬剤師であれば同じ薬剤師という立場。われわれは職能団体であり、薬剤師が個人として薬剤師会に入ることで、生涯学修や、感染症対応等の組織活動への参加を促していく」と話す。

これからの認定薬局

コロナ禍では医療機関の“密度”の薄さが対応力を発揮できなかったとの指摘もあった。薬局にも同じことは当てはまるのではないか。一定程度の薬剤師数があって、1店舗としての一定の規模がある薬局、対応能力がある薬局をつくっていくことも必要になるのではないか。この点に関して、永田会長は、その必要性を認めた上で、「患者からの選択に、高齢化による後継者問題があいまって、自然と東京でも起こり得る」との考えを示した。「いつも同じ薬剤師がいて、信頼関係に基づいた適切な服薬指導をしてくれる。患者はその薬局を選ぶ。それが自然に周辺の薬局との差につながり結果的に選ばれる薬局の対応能力が大きくなることはあり得るであろう」と語った。

運用における視点の違いを指摘するものの、永田会長も地域連携薬局の考え方には賛同する。対応能力のある薬局が地域連携薬局の中核となることによってつくられるべきとする。ただ、それは「自分の薬局のため」ではなく、「地域のため」だと繰り返し強調する。

6月には都薬会長のバトンを渡すことが決まっている永田会長。この間、定例会見では時に聞いている方がハラハラするような率直な発言を続けてきた。それによって物議をかもすこともあった。ただ、永田会長が一貫して言っていたのは、「薬剤師である以上、薬剤師としてどうすべきかは理念・概念に基づいて考えるべき」ということだ。決まったルール・法律に対してのみ適応しようとするように見えることがあることへの懸念を示してきた。ただ、それは「社会に出たら当たり前に持つべきもの」との考えも示し、処方に基づく調剤への偏重が、もしかしたら理念を希薄化させたのかもしれないとも指摘する。
地域連携薬局も基準があり、それを満たしていれば取得はできる。ただ、地域連携薬局が目指そうとしているものは何なのか。そこに立ち返って、その理念を共有することができれば、それはこれから増加するであろう認定薬局の軒数以上に薬局業界の強みにもなるはずではないかと感じる。

関連記事
■【厚労省】認定薬局の基準Q&Aを一部改正/地域ケア会議等3会議以外も認める
https://www.dgs-on-line.com/articles/2066

© 株式会社ドラビズon-line