風力と水素で船を推進 商船三井 長崎・大村湾で実証試験

風力、水素エネルギーによる実証試験をするヨット「ウインズ丸」=大村湾

 商船三井(東京)は洋上の風エネルギーと、船内で生産したクリーンエネルギーの水素を活用して船の推進力とする「ウインドハンタープロジェクト」を進めており16日、ヨット「ウインズ丸」による本格的な実証試験を大村湾で始めた。
 プロジェクトは2020年に始動。長崎県佐世保市の西日本流体技研、スマートデザインなど計10の機関がプロジェクトメンバーとなり、共同開発に取り組んでいる。
 再生可能エネルギーの風力で推進すると同時に、水中のタービンが回って発電し、水から水素を生産。水素を別の状態に変換し貯蔵する水素キャリアの技術を活用し、「メチルシクロヘキサン(MCH)」としてタンクに貯蔵。風が弱いときは、MCHから取出した水素を使って燃料電池を発電させ、電動スクリューを回して推進する仕組み。このシステムの開発は世界初という。
 これまで水素キャリアで「水素吸蔵合金」に変換した実証試験を実施。今回、MCHに変換することで、効率化と安全性の改善を図った。実証試験は6月まで実施し、各種データを取得する。将来的には貨物運搬船や水素生産船としての建造を目指している。
 商船三井技術革新本部の山口誠本部長は「風を使った水素の船。今まで化石燃料を使っていたが、二酸化炭素(CO2)排出をなくすという目標。いろんな可能性を探り、次のステージにいきたい。佐世保の企業などと未来を感じながら進めたい」と話している。

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