県内でサイバー相談増加 「迷惑メール・スパムメール」 5年で5倍以上

 鳥取県内でコンピューターネットワークに関するトラブルの相談(サイバー相談)が年々増えている。鳥取県警に寄せられた相談は、この5年で「不正アクセス・コンピューターウイルス」に関するものが3倍以上、「迷惑メール・スパムメール」に関するものが5倍以上に増加。サイバーセキュリティーの専門家は、常に危機意識を持った対応を求めている。

 サイバー犯罪はたびたび問題になってきた。2015年に日本年金機構が不正アクセスを受け、約125万件の個人情報が流出。21年には徳島県内の公立病院で電子カルテが利用できなくなった。いずれも外部からの攻撃が原因だ。

身近な脅威に

 鳥取県警によると、受理したサイバー相談のうち、「不正アクセス・コンピューターウイルス」は、18年に47件だったのが22年は172件。「迷惑メール・スパムメール」も同様に53件から272件へと増えた。サイバー犯罪が身近な脅威になりつつある。

 一方で、パソコンなどの利用者側の対策はどうか。17年に県内企業を対象に行われた調査によると、社員100人以上の企業の90%以上が専門部署を設けるなどの対策を講じていたが、100人未満の企業では約45%が組織的な対策を行っていなかった。

 県内の企業経営者の男性は取材に対し「対策をしているつもりだが、これで十分なのか不安はある」とこぼす。男性の会社では対策ソフトの導入に加え、専用の機器を介さないとパソコンにアクセスできない環境を構築。顧客の情報が外部に漏れないように注意を払っている。しかし「セキュリティー対策で売り上げがアップするわけではなく、経費だけが上がるのでさらなる対策は難しい」。

 県警は18年度にサイバー犯罪対策課を新設し、サイバー犯罪の撲滅に取り組む。個人や企業ができることとして、基本ソフト(OS)やウイルス対策ソフトを常時更新する▽企業を名乗って届く電子メールやショートメッセージ(SMS)に注意する▽データをバックアップする-などを挙げ、「もし企業で異常を察知したら、パソコンの電源を落とすのではなく、LANケーブルを抜いて警察に相談を」と呼びかける。

難しい完全な防御

 19年に立ち上げたサイバーセキュリティー監視センターで顧客企業のパソコン一台一台を24時間365日の体制で常時監視するケイズ(米子市両三柳、松本啓社長)。三島潤三常務は「電子メールに添付されたファイルには注意を」と強調する。

 一般的に多く見られる手口として、通常業務でやりとりする内容を装って情報を盗み取るためのファイルが添付されたメールが送られてくるといい、「近年は正常なものと怪しいものとの区別がつきにくい」と指摘。「いろいろな対策をしても100%防ぐというのは難しい。完全な防御が難しいということを皆さんが常に認識することが大切」と話す。

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