浄土目指し帰らぬ「渡海上人」 和歌山、世界遺産の寺で供養

補陀洛山寺の裏山にある「渡海上人」の墓前で、読経する僧侶=17日午後、和歌山県那智勝浦町

 世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する和歌山県那智勝浦町の補陀洛山寺で17日、海のかなたにある浄土を目指して小舟で旅立ち、再び帰らなかった渡海上人と呼ばれる僧侶たちの供養が営まれた。

 寺によると、僧侶はわずかな食料と水、灯明用の油を積んだ小舟に乗せられ、近くの浜から海へ出た。僧侶は死の直前まで経を唱えたと伝わり、平安から江戸時代まで20人以上が旅立った。江戸時代には亡くなった僧侶を送り出す水葬の形に変わった。

 本堂で法要と護摩たきが行われた後、高木智英住職(41)らが裏山の墓前で読経した。高木住職は「平安時代から続く信仰の歴史を後世に伝えていきたい」と話した。

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