草彅剛主演で「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」をドラマ化。コーダの手話通訳士役

草彅剛が、NHK総合・BS4Kで今冬放送の予定のドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(日時未定。前・後編)で主演を務めることが分かった。

「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」の原作は、丸山正樹氏による同名小説。口コミで静かな話題を集め、“読書の甲子園”といわれる全国高校ビブリオバトルでグランドチャンプ本となった。読者の熱い要望によりシリーズ化され、10年以上にもわたって根強い支持を得る作品群の中からドラマ化されるのは、人気に火をつけた1作目。仕事や家族を失い人生に迷う男性が、自分の唯一の技能である手話を生かして手話通訳士になり、新たな人生のスタートを切る物語が、殺人事件をめぐるミステリーとともに繰り広げられる。

手話やろう者の世界について取り上げたドラマが放送されたり、海外でも高い評価を得る映画が公開されたりするなど、社会的な関心が高まっている昨今。2025年には世界規模で行われる聴覚障害者のための総合スポーツ競技大会「デフリンピック」が日本で初めて開催されることが決まっており、ろう者・ろう文化についての理解がより広く求められている。

そんな今日的な題材に向き合ったドラマで草彅が演じるのは、主人公・荒井尚人。ろう者の両親の間に生まれた耳が聴こえる子ども、コーダ(CODA=Children of Deaf Adults)であり、自身の生き方や他者との関わり方について悩み、現在 と過去の事件を追う中で自身が果たして何者なのか、周囲の人から問われ自分自身にも問いかけることになる人物だ。ドラマの中では草彅が手話を使って演じるシーンもある。

また、ドラマ化に際してオーディションを行い、20人近いろう者・難聴者のほぼすべての役を、実際にろう・難聴の俳優が演じるのが、本作ならではの試みとなる。

演出は「岸辺露伴」シリーズ(NHK)などを手掛ける渡辺一貴氏。制作統括の伊藤学プロデューサーを中心に、3年前からじっくり取材を重ね、構想を温めてきた作品でもある。従来のドラマや映画を超えたリアリティーで、ろう者やコーダが抱える悩みや葛藤を繊細に描く。加えて、本作の特徴でもあるミステリー要素も存分に堪能できる作品となっている。

草彅は「今回、ろう者の方たちとご一緒させていただき、毎日、楽しい現場を共有しています。手話の演技も初めてなので緊張しますが、ご覧になる皆さんが楽しめる作品になるよう、頑張ります!」と意欲を燃やす。

原作の丸山氏は「このたび、最高のスタッフ&キャストにより『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』が映像化されることが決まり、大変うれしく思っています。脚本を拝読し、素晴らしい作品になることを確信しています。主演の草彅剛さんはもちろんのこと、信頼するろう者およびコーダの方に手話監修・指導をお願いすることができ、さらに『ろう者役はろう者俳優で』という当事者たちの長年の夢を実現できたこと、関係者の皆さんに心より感謝いたします」と映像化への喜びを伝える。

渡辺氏は「昨年春、ろう者劇団の所属メンバー、映画や演劇への参加経験者から、演技経験はないがお芝居に興味のある方まで、老若男女多くのろう者の方にお集まりいただき、このドラマのためのオーディションを行いました。驚きました。その表情の豊かさ、温かさ。表現の多彩さ、細やかさ。手話の『手』だけではなく、顔や全身を使った感情表現に圧倒されました。何よりも皆さんが『演じる』ことを心の底から楽しんでいる。こんなに楽しく、そして刺激的なオーディションは初めてでした。この思いをぜひ皆さんにもお届けしたい。いえ、お届けしなければいけない、と思っています」と心境を明かしている。

制作統括を務める伊藤学プロデューサーは「生き方や境遇が違う私たちは、一体どれだけ分かりあえるだろう。聴者同士でもコミュニケーションが難しい世の中で、聴者とろう者の隔たりはどれほどだろう。そのはざまで生まれ、もがく男の目線を通して、たくさんの気付きをお届けしたい。そんな思いを持って、草彅剛さんをはじめ、多くのすばらしいろう者俳優の皆さん、心強いスタッフとともに、日々楽しく撮影を行っています。このドラマを見てくださった方たちの世界を見る目が、より豊かになればと願っています」とメッセージを寄せている。

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