藤沢・江の島へ渡る「海の道」 トンボロ現象を観光資源に 安全な上陸手法を検討

「海の道」が現れ江の島と浜が地続きになるトンボロ現象

 干潮時、「海の道」が出現し藤沢市江の島と対岸の浜が地続きになる「トンボロ(陸繋砂州(りくけいさす))現象」。鎌倉時代に成立した歴史書「吾妻鏡」に記述があり、江戸時代の浮世絵に描かれるなど古くから人々の関心を引いてきた。地元では知られた自然現象を観光コンテンツとして活用しようと、市観光協会がトンボロを渡って安全に江の島に上陸する手法を検討している。

 吾妻鏡には、1216年1月15日、江島明神(弁財天)からのお告げがあり、海がたちまち道となり参詣者が船に乗らず江の島へ渡れるようになったとの記述がある。また、江戸時代の浮世絵師葛飾北斎の代表作「冨嶽(ふがく)三十六景」の「相州江の嶌」には、トンボロの参道を歩いて江の島へ向かう人々が描かれている。

 トンボロは長年にわたり江の島周辺地区の名物として知る人ぞ知る現象だった。ただし、海の道が現れるのは3月から9月の新月または満月の干潮時のみで1時間ほど。めったに起きないため、これまで同協会などが観光資源としてPRすることはほとんどなかった。

 この極めて珍しい自然現象に改めて着目したのは、同協会の湯浅裕一会長。かねて江の島周辺の歴史をテーマにしたガイドツアーなどヒストリカル・ツーリズム(歴史観光)を推進しており、観光と科学の両面から観光コンテンツとして活用できないか、市観光課と共に検討を進めている。

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