<社説>G7広島サミット 分断から融和へ道筋示せ

 広島で19日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が開幕する。それに先立つ18日には岸田文雄首相とバイデン米大統領の日米首脳会談がある。サミットの日本開催は7年ぶり。長期化するロシアのウクライナ侵攻への対応や核軍縮、人工知能(AI)技術への対応などが議題となる。 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は国際社会の分断をもたらした。中国の軍事的な台頭、北朝鮮の相次ぐミサイル発射は東アジアの安全保障環境の不安定要素となっている。

 初めて被爆地で開かれるサミットは、これらの課題に正面から向き合い、国際社会を分断から融和への道筋を示さなければならない。そして、核軍縮に向けた断固たる決意を表明すべきだ。最終日には共同宣言を発する。議長国日本は主導的な役割を果たす必要がある。

 ロシアのウクライナ侵攻から2度目となる今回のサミットを、一刻も早い停戦とロシア軍撤退を導く場としなければならない。ウクライナへの支援とロシアへの強力な制裁を継続する方針を確認する見込みで、ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン参加が予定されている。

 G7はこれまでもウクライナ支援とロシア経済制裁で共同歩調を取ってきた。岸田首相も3月にウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談し、他の先進国にアピールした。しかし、制裁強化だけで停戦を成し遂げることができるのか疑問である。

 今回のサミットでは「グローバルサウス」と呼ばれる中東、アジア、中南米の新興・途上国への関与が主要議題となっている。ウクライナとロシアに対し中立を保っている国もある。制裁一辺倒ではなく、これらの国々との対話と相互理解を踏まえた外交努力の促進をサミットの場で模索する必要がある。

 被爆地でサミットを開催するからには核軍縮へ向けた先進国の明確な意思を発信するべきである。

 岸田首相は共同通信などのインタビューで「厳しい現実を理想に近づけるため、核兵器のない世界に向けた機運を高め、力強いメッセージを発したい。より現実的で具体的な取り組みを着実に進めていく」と語っている。それを実行に移してほしい。議長国の指導力が問われている。

 18日の日米首脳会談ではインド・太平洋地域における中国の軍事力拡大を踏まえ、日米同盟の抑止力、対処力強化に関して話し合う予定だ。

 しかし、沖縄が両国首脳に求めることは抑止力強化ではなく緊張緩和である。

 「台湾有事」や「北朝鮮の脅威」を名目とした南西諸島の軍備増強は基地の重圧を一層強めるものである。県民は重圧の軽減を訴えてきた。岸田首相は日米同盟の負担を強いられる沖縄の現状を直視し、基地負担軽減をバイデン大統領に直言すべきである。

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