離島留学の課題話し合う 壱岐の生徒死亡受け長崎で集会 「命と人権守りたい」

離島留学の現状や課題を話し合った集会=長崎市、長崎中央公民館

 長崎県の離島留学制度で県立壱岐高に在籍していた茨城県出身の男子生徒(17)が3月に行方不明となり死亡したことを受け、長崎市内で16日、離島留学の現状や課題を踏まえ話し合う集会があった。死亡事案の背景を説明した武原由里子・壱岐市議は「子どもの命や人権を守るため、民間でできることを考えたい」としている。
 市民団体「子どもの未来応援実行委員会」壱岐支部が開催。留学生の保護者や元留学生ら70人がオンライン併用で参加した。同支部事務局の武原市議は、里親の研修制度や児童生徒の相談体制の脆弱(ぜいじゃく)さ、受け入れる里親の少なさなどを説明。参加者からは「子どもの命が守れなかった責任を感じ取れていない大人が多いのではないか」「本来は素晴らしい制度だが、このまま続けると同じことが起きてしまう」と懸念する声も出た。
 同制度は国土交通省が自治体と連携し、全国の離島で実施。本県は先駆けて2003年度に導入し、現在は対馬、壱岐、五島3市の計五つの高校で受け入れている。さらに壱岐市は独自に交流人口拡大を目指し、18年度から小中学生向けにも「いきっこ留学制度」を創設。亡くなった生徒はこれを利用して中学2年時に移り住み、壱岐高に進学していた。
 16日の集会には、いきっこ留学制度を以前利用した生徒もオンラインで体験を語った。同席した母親によると、生徒は県外の中学で不登校になり、環境を変えようと同市内の里親宅で暮らしたが、体調不良で通常登校が難しくなった。その際、同市教委関係者から登校を強要するような発言があったという。この生徒は約1カ月で留学をやめた。
 同市教委は取材に「強要ではなく、子どものことを一番に考えて対応や支援をしてきたが、説明が足りなかった部分があるかもしれない。支援体制についても(県設置の)検討部会で改善に向け進めていく」と述べた。
 県は4月、有識者らによる「これからの離島留学検討委員会」の検討部会を3市にそれぞれ設置した。このうち壱岐の検討部会は第三者を交え、いきっこ留学制度も議論する。死亡事案については、学校や里親、遺族らに聞き取り調査した内容を説明し、その後の県検討委でも協議する。

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