新治療で生存率91%に上昇、T細胞性の急性リンパ性白血病に効果 小児センター発表 副作用強い治療半減も

急性リンパ性白血病、生存率91% 小児医療センター共同研究

 埼玉県立小児医療センター(さいたま市)は17日、同センターが参加した日本小児がん研究グループ(JCCG)と成人白血病共同研究機構(JALSG)が共同で実施した急性リンパ性白血病に対する多施設共同臨床試験の結果が、世界的な一流科学誌「Lancet Haematology」に受理(9日にオンラインで発行)され、従来は不良だった治療成績が世界トップレベルに上昇したと発表した。

 臨床試験は2011年に全国125施設で開始。0歳から25歳未満の計349人が治療を受け、21年まで経過を観察した。従来はB細胞性と比較して生存率が約10%低かったT細胞性急性リンパ性白血病の生存率を、約70%から91.3%に改善するとともに、副作用の強い放射線治療や造血幹細胞移植を受ける割合を半減させることに成功した。

 急性リンパ性白血病は、白血球の一部を占めるリンパ球の元となるリンパ芽球という細胞ががん化する、小児がんの中で最も多い疾患。患者登録数で全国第1位の同センターによると、小児および若年成人の急性リンパ性白血病は日本で年間およそ500例発症し、そのうち10~15%がT細胞性だった。生存率向上の理由については、ネララビンという新しい薬剤を従来の治療に追加したことなどが研究成果としてまとめられた。

 研究運営で重要な役割を果たし、論文の共同筆頭著者である同センター血液・腫瘍科の大嶋宏一医長は今回の研究について「T細胞性は再発させないことが重要。生存率の向上に加え、小児にとって治療後の長い人生において合併症のリスクを低減させられることが大きい」と話した。

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