Vol.69 Inspire 3開封レビュー!コレが6年半の空撮ドローン技術の集大成!!・前編[Reviews]

実に6年半の期間を経てバージョンアップしたInspire 3。バージョンアップへのニーズは高く、一日も早く手にしたいユーザーも多いのではないでしょうか。編集部ではさっそくInspire 3をお借りすることができましたので、まずは外見まわりを見ていきたいと思います。

Inspire 3はやはり空撮ドローンの最高峰!6年半で飛躍的に進化したスペック

Mavic 3シリーズでも4/3インチセンサーカメラを搭載するこの頃、やはりInspire 3はフルサイズセンサー搭載の8Kカメラでデビューしてきました。最大8K/75fps ProRes RAWまたは8K/25fps CinemaDNGの撮影が可能で、映画・TVCMなどハイエンドな映像制作現場で活躍することは間違いありません。

ほかにも、飛行性能も飛躍的に向上しています。筆者もInspire 2を愛用していますが、今となっては最新機種と比較すると飛行安定性や映像伝送などに少し不安を抱えるところもありました。もちろん、それらも最新フォーマットに更新され、筆者の操縦した感覚では最新のMavic 3 Proの機敏性と安定性がそのまま大きな機体に取り込まれ、更にもう一段回上の飛行性能を手に入れたイメージです。ふらつくことなく機敏に加速・停止し、水平・上下ともに速度がでるので変化に富んだ画角を作ることができます。

Inspire 3/Inspire 2飛行性能比較

ほかにも…

  • 4つの魚眼センサーをランディングギア+上部広角+底部魚眼&ToFセンサーで全方位の障害物監視を実現
  • 1/1.8インチ超広角ナイトビジョンFPVカメラ搭載
  • デュアルRTKアンテナ × Weypoint Pro でcmレベルの再現飛行が可能
  • 脱着式1TB SSDを機体本体に搭載
  • 電源を落とさずにバッテリー交換ができるホットスワップに対応
  • DJI RC Plusプロポは内蔵+外付けバッテリーで最大6時間
  • 2プロポは独立して映像伝送信号を受信(フェールセーフとしても利用可能)
  • バッテリー充電ハブは急速で2本同時90%が35分、8本で完全充電に160分

などなど、書ききれないレベルの優れた機能を搭載しています。

Inspire 3の細部にわたるこだわりと洗練されたデザイン

では、さっそく機体の各部を見ていきたいと思います。全体的には旧Inspire 2と比較するとスリムになった印象です。本体部分などは特に薄くなり、今となっては洗練されていたInspire 2がずんぐりむっくりに見えるくらいですね。

洗練された工業デザイン。全体的にスマートになった印象
Inspire 3とInspire 2の比較。Inspire 3は一回り大きくなりボディもスリムかつ流線型になった

ランディングギアは従来どおり上げ下げ可能

Inspire シリーズの特徴でもあるランディングギアは今回も上げ下げ可能になっており、カメラがパン(横方向の回転)をした際にランディングギアが映り込むことを避けることができます。ランディングギアの外側には魚眼障害物検知センサーがあります。ランディングギアに障害物検知センサーが付くことで、センサーと機体の干渉を防いでいます。

ランディングギアを上げた状態。カメラは機械的に330°回転可能で、クイックスピン機能も搭載(ジンバルが回転制限に達したとき、操作に影響を及ぼすことなく、機体自身をカメラと同じ方向に回転することで、ジンバルの可動範囲に制限されずに撮影できる)
水平方向の障害物検知センサーはランディングギアの外側にあり機体の干渉を受けることはない
上方の障害物検知センサーは広角カメラとなった
機体底部。2つの魚眼障害物検知センサー(中央)とToFセンサー(上部)、2つのLEDランプ(下部)を備え、機体の低空時の高度維持や位置精度、安全性を高めている

さらに、障害物検知センサーは個別での有効/無効や障害物警告範囲を設定できるので、飛行シチュエーションに合わせてセッティングすることで安全かつ高品位な飛行をすることができます。

全方位の障害物検知機能に対し個別にON/OFFや警告距離・制動距離を設定することができるようになっている

ランディングギアと機体は若干斜めに組み合わさっているので、ランディングギアを下ろして着陸しているときは機体前部が上を向くカタチとなり、カメラやレンズの脱着に対してとても便利です。また、ランディングギアを下ろした状態で飛行させると、前進時に機体が前傾姿勢となることで機体本体が水平となり、空気抵抗を減らすことで若干飛行時間を延ばすこともできます。

ランディングギアが下がっているとホバリング時は機体前部が上向きになるが、前進することで前傾姿勢となり、機体ボディが地面対して水平となるため空気抵抗が削減、飛行時間が若干延びる
ランディングギアが上がると機体はホバリング時に水平になる

DJI史上最小のフルサイズセンサーカメラ Zenmuse X9-8K Air

ジンバルカメラ Zenmuse X9-8K Airの脱着方法は Inspire 2とほぼ同じです。レンズの装着は二重のロック機構となっており、装着異常があるとプロポにエラー表示も出るため安心です。キット標準は18mmの新開発レンズとなっているほか、Zenmuse X7等と同じDLマウントを採用していますので、既に所有しているDLマウント用レンズを使うことができるのもうれしいところです。

フルサイズセンサーを搭載したX9-8K Airジンバルカメラ。18mmレンズが標準だが、DLマウントの24mm/35mm/50mmも利用できる

ナイトビジョン型FPVカメラを機体最前部に搭載

操縦オペレーター用FPVカメラは画角が約2倍の161°に進化(Inspire 2は84°)。センサーサイズも1/1.8(Inspire 2は1/7.5)インチ、解像度も1080p/60fps(Inspire 2は480p/30fps)になり、加えて高感度のナイトビジョンカメラにより鮮明な映像を(薄暗い環境でも)提供してくれます。

FPVカメラは機体前部の最上部に配置が変わった
FPVカメラナイトビジョン効果。日の入り直前のため薄暗い環境下だったが昼間のように明るく映る(画面右下がFPVカメラの映像。ジンバルカメラの設定はオートでEV0.0になるように設定)

バッテリーは新型TB51 ホットスワップも簡単に

バッテリーは、カタチは似ているものの、Inspire 2で使用していたTB50ではなく、進化型のTB51となっています。最大28分の飛行を可能とし、ホットスワップ(電源を落とさずに片方ずつバッテリーを交換する方式)も簡単にできるようになっています。

バッテリーは2つで1組のため片方ずつ交換することで電源を落とすことなくバッテリー交換ができる
バッテリー片方ずつに取り外し用レバーがあるためホットスワップがかんたんにできるようになった

バッテリー充電ハブも刷新され、8つのバッテリーを同時に差し込むことができ、急速充電モードでは2つのバッテリーを同時に0%から90%までわずか35分で充電することが可能です。

折りたたみ時に直方体に収納できる新型バッテリー充電ハブ。展開すると充電ポートが現れる
充電モード変更スイッチと65WのUSB-Cポートを備える。USB-CポートからRC Plusプロポの充電などが可能だ

刷新されたRC Plus プロポは7インチ1200ニトの高輝度モニター搭載

Inspire 3に用意された新しいプロポは、7インチ1200ニトの高輝度モニターを搭載したRC Plus。DJI Pilot2 アプリで運用します(同タイプのMatrice 30用プロポと互換性はないようです)。今までのプロポサイズよりも一回り大きなタイプとなりますが、筆者の感覚ではなれると操作性に問題は全くありませんでした(ただし、ストラップは使ったほうが楽です…)。

RC Plus プロポはMatrice 30 と同型のタイプ(互換性はなし)
さまざまなFunctionキーで調整・設定ができるようになっている(カスタマイズ可能)
左側上部にはチルト用ホイールや飛行モード変更スイッチ
プロポの上部にはさまざまな端子が備わる
裏蓋を開けるとWB37バッテリーを外部バッテリーとして利用し最大6時間稼働する。Inspire 2 で利用したCendenceプロポやCrystalSkyモニター、D-RTK2 などにも共通のバッテリーのため汎用性が高く助かる

また、標準でRC Plusは2つ付属してきます。Inspire 2でマスター/スレーブのデュアル制御設定をする際には手間取ることがあったのですが、今回のInspire 3のRC Plusはすぐに接続完了。しかも、個別に機体に接続しますので、操縦設定のRC Plusが電波断絶したとしてもカメラ操作設定のプロポでフェールセーフ的に操縦に割り当てて操縦を継続することができます(Inspire 2はマスタープロポが機体と接続、カメラ操作のスレーブはマスタープロポと接続するので電波断絶するとマスター/スレーブともに断絶します)。

挿入式 1TB SSDや折りたたみ式プロペラなど便利な機能がたくさん

映像の記録はMicroSDではなく、挿入式の1TB SSDを用います。直接USB-CでPC等と接続できるので便利です。

ヒートシンクの付いたSSD。下面にUSB-Cポートを備える
機体には上部から差し込む。MicroSDは省かれているので注意が必要

プロペラはMavicシリーズのような折りたたみ式になりました。秀逸なのは、このプロペラを折りたたんだ状態で収納ボックスに入れることができること(バッテリーも装着状態でOK)。Inspire 2は毎回折りたたみ式でない大きなプロペラを脱着して収納していたのですが、ちょっとした移動時に収納しなくてはならないときなどに少し煩わしさを感じていました。Inspire 3ではちょっとした収納&移動というシチュエーションでもストレスを感じさせません。

プロペラ部分はMavic 3シリーズに似たデザインとなっている
機体にプロペラやバッテリーを装着した状態でも収納できるのが地味にウレシイ(Inspire 2ではバッテリーやプロペラは外す必要があった)
ケースはキャスター付きのハードケースで安心感がある(サイズは56×76×22cmくらい)

これ以上何もいらないレベルの完成度!撮影現場の空撮を変えることができるか?

ファーストインプレッションとしては、空撮に必要なものがすべて揃った機体…という印象を受けました。今回は飛行前のインプレッションとなりましたが、Waypoint Proによる再現飛行など、空撮の方法を変えてしまうレベルのポテンシャルがある機体なのではないでしょうか。

もちろん、お値段もそれなりとなりますので(1,769,900円~)、コストパフォーマンスを見て必要な方も絞られるかもしれません。自分にとって必要か、それとも"Too Much"なものなのか、記事が参考になれば幸いです。

次回は、実際にフライトさせて機能検証をしていきたいと思います。

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