<社説>沖縄電力値上げ 痛手抑える支援が必要だ

 沖縄電力が6月から電気料金を値上げする。物価高が家庭や企業を直撃する中での値上げは、コロナ禍から回復しつつある景気に悪影響を及ぼしかねない。ダメージを最小限に抑える支援策が必要だ。 全国の電力会社のうち、沖電は最も上げ幅が大きい。原価ベースでの値上げ率は家庭向けなど「低圧」が40.9%、企業向けの「高圧」が49%、規制料金全体で43.4%になる。政府による電気代の負担軽減策を含めると、標準家庭での値上げ幅は951円(11.4%)増の9265円に抑制されるが、9月までの暫定的支援だ。

 経済活動や県民生活に不可欠な電気の値上げは、沖縄社会全体を直撃する。沖縄はサービス業が中心のため、資源価格の高騰はそのまま物価上昇に反映される傾向にある。電力各社の値上げに起因する流通コストの上乗せでさらなる物価上昇も予想される。日用品を県外からの移入に依存する沖縄への影響は大きい。

 1人当たりの県民所得が全国で最も低い沖縄で、電気代値上げは家計に重くのしかかる。ひとり親世帯や高齢者などへの影響は深刻だ。

 原油価格の高騰、円安も相まって電力各社が値上げに踏み切らざるを得ない側面はある。特に海に囲まれる沖縄は、点在する離島にも電気を安定供給する一律のサービスを維持する必要があり、発電費用は高くなる。それでも、今回の値上げをすんなりと受け入れるわけにはいかない。

 安定的に電力を供給し続ける沖電への信頼は高く、電力小売りが全面自由化された2016年以降も県内で圧倒的シェアを占める。半面、電気料金が高止まりしているのではないかとの疑問を抱く県民もいる。値上げに際し、沖電は県民の理解が得られるよう丁寧な説明に努めるべきだ。

 6月からは内閣府と県による電気料金の追加支援も予定されている。国の財政支援は現時点で暫定的だが、沖縄の特殊事情を踏まえ、県民生活や県経済に与える影響を最小限にとどめるよう安定的な支援が必要だ。

 消費者庁は今回の値上げの協議に当たり、3回の有識者会合を開催した。一部の大手電力間のカルテルや、顧客情報の不正閲覧などの問題による料金審査への影響を検証した。経済産業省側へのヒアリングで、電力会社全体が高コスト体質であることなどが確認されている。経営の効率化は喫緊の課題だ。沖電にもさらなる経営改善を求めたい。

 本県の場合、地域特性を踏まえた再生エネルギーの普及を推進する必要がある。原子力発電は県民合意が見込めず、事故対応などを考えると投資効果が得られない。

 沖電は化石燃料の輸入に依存した構造を見直し、再生エネルギーを導入しながら安定的な電力供給体制を築いてほしい。県や政府も「地産エネルギー」の普及に向けた研究支援を展開してほしい。

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