
がん患者らの支援に取り組む日本対がん協会長の垣添忠生さん(82)=東京都=は、青森県から本県までの海岸沿いに整備された自然歩道「みちのく潮風トレイル」を歩く旅を続けている。3月に青森県八戸市を出発し、19日に目的地の相馬市に到着する。道中、がん患者や東日本大震災の被災者と交流した垣添さんは「困難から、人がどう立ち上がるのか、その秘密をさぐる旅だった」と振り返った。
垣添さんは国立がんセンター泌尿器科に勤務し、同センター総長を務めた。退職後、日本対がん協会長に就いた。今回の旅ではがん患者や震災被災者への支援を呼びかけている。「がんサバイバーを支援しよう」「3.11を忘れない」と書かれたのぼりを手に、一部区間で交通機関も使いながら、4回に分けて潮風トレイルをたどっている。
旅の中で、津波で家族を失った女性や、震災も経験したがん患者の声に耳を傾けてきた。交流を通じて「困難から立ち上がるには、かすかな希望を持つことが必要だ」と気付いたという。
垣添さんも、絶望の中で希望を見つけ、日常を取り戻してきた。自らがんを経験し、2007年には妻の昭子さんをがんで失った。数カ月間、昭子さんが身に着けたものを目にする度に涙が止めどなくあふれた。アルコールにおぼれる生活を送ったが、運動を取り入れるなどして、少しずつ抜け出していったという。
「人間は強い。どんな困難にぶつかっても、必死に生きることで、やがて穏やかに暮らすことができるようになる」と思いを語った。
今回の旅の全行程に映画監督の野沢和之さんが同行。野沢さんはドキュメンタリー映画の制作を予定している。