地震に負けず塩作り 能登の揚浜式製塩、角花さん 15日ぶり本炊き

かん水を煮詰める角花さん=19日午前11時50分、珠洲市清水町

 珠洲市で最大震度6強を観測した地震を受けて中止されていた伝統の塩作りが19日、同市清水町の「角花(かくはな)家」の作業小屋「釜屋」で15日ぶりに始まった。国重要無形民俗文化財に指定されている「能登の揚浜式(あげはましき)製塩の技術」を受け継ぐ6代目浜士(はまじ)角花洋さん(48)が、製塩の最終工程「本炊き」に取り組んだ。19日夕方に塩の結晶ができる見込みで、角花さんは「伝統の塩作りを続けることが大切。多くの人を珠洲に呼び込みたい」と意欲を見せた。

 角花さんは午前9時ごろ、釜屋内にある直径2メートルの鉄釜に塩田でつくった塩分濃度の濃い「かん水」を入れ、まきに着火して煮詰めた。まきを15分ごとに継ぎ足して火加減を調節し、夕方にほとんどの水分が蒸発すれば、塩の結晶が取り出せる。

 5日の地震では、約200平方メートルの塩田や釜屋に被害はなかった。しかし、木造平屋建ての釜屋は茅葺(かやぶ)きで、万が一、かん水を煮詰めている最中に再度、強い地震が起きると火が燃え広がる恐れがある。

 このため、5日以降は塩田に海水をまく作業は続けたが、できたかん水はタンクに貯蔵して本炊きは地震前に行った4日を最後に控えていた。地震から2週間がたち、揺れを感じる回数が減ってきたため、本炊きを再開した。

 通常は本炊き1回でかん水を約800リットル使い、塩が60キロできるという。19日は通常よりも少ないかん水を使い、鉄釜などの状態を確認する。

 揚浜式製塩は400年以上の歴史があるが、明治以降は各地で生産性の低い塩田が廃止された。昭和30年代には洋さんの祖父・菊太郎さんが国内でただ一人の担い手となり、角花家で伝統の製法を受け継いでいる。

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