日本政府、際立つ対米配慮 原爆資料館の取材認めず

 日本政府は19日、史上初めて実現した全ての先進7カ国(G7)首脳による原爆資料館(広島市)への一斉訪問の際、メディアによる館内取材を認めなかった。資料館の窓ガラスに白いシートを張り、外から内部をうかがうことすら制限した。米国内に根強い「戦争終結のため原爆投下は必要だった」との世論や、同盟関係にある米政府への配慮が際立った形だ。

 16年に現職の米大統領として初めてオバマ氏が広島を訪問した時には、被爆者との抱擁が日米の「和解」を印象付けた。今回は資料館内でG7首脳が被爆者と対話したことは明らかにしたものの、バイデン米大統領を含め、対面時の首脳の表情や対応については公表しなかった。

 G7首脳に被爆の実相を伝えるため、どのような展示を見てもらったかも注目された。だが、報道発表は「岸田文雄首相が展示内容を説明した」と記すのみだった。

 政府関係者は、秘匿の背景には米国の世論に加え、安全保障戦略があると指摘。「米国が核を使用しないとの誤解を与えれば、核抑止力に依存する日本にも悪影響が出る」と語った。

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