2年連続でファイストフライデイトップの佐藤琢磨。仕上がりに満足も予選のくじ運に「厳しいなぁ」と落胆

 インディ500のプラクティス最後となるファストフライデイは、予選用にブースト圧も上がって完全に予選を想定したプラクティスの日となる。

 予選グリッドを占う大事なこの日をトップで締め括ったのは、チップ・ガナッシ・レーシングの佐藤琢磨だった。

 プラクティス2日目もトップタイムで終えて、3日目は7番手。そして4日目となるファストフライデイは、1ラップのスピードも234.753mphとトップタイムであり、なおかつ予選同様4周のアベレージスピードも233.413mphと、こちらもトップタイムで、この日文句なくいちばん速いドライバーだった。

 補足すると1周の最速タイムは1996年以来のプラクティスでの最速ラップタイムとなり、23年ぶりにそれを更新したことになる。

 ファストフライデイ朝、チップ・ガナッシのチーム会見があった。そこでオーナーのチップ・ガナッシに「佐藤琢磨を迎えてあなたはハッピーですか?」と記者が質問が飛ぶ。

 チップは「ええ、もちろん。彼を迎えてハッピーだ。彼はチームのために多くのものをもたらしてくれている」と評し、琢磨のここまでの仕事ぶりを称賛していた。

チーム会見で笑顔を見せるチップ・ガナッシのドライバーたち

 琢磨のここまでの仕事は、確かに褒められていいものだろう。チップ・ガナッシ流のやり方に、琢磨のエッセンスが加わったことで、4台がバランスよくスピードを上げ、プラクティスの間、チップガ・ナッシのクルマは常に上位にいた。

 ファストフライデイも、琢磨は最初のアテンプト役となりトラックに出た。

「他のドライバーが誰も行かなくて、時間もなくなっちゃうから(苦笑)」と言っていたが、琢磨はウォームアップ後の最初の計測ラップでいきなり234.753mphの驚速タイム。

コースへと向かう佐藤琢磨の11号車
チームメイトの琢磨を気にするスコット・ディクソン

 ターン2のウォールに接触寸前で押さえ込んだが、明らかにマシンは滑っており、翌周も233mph台だったものの、このアテンプトをキャンセル。ピットに戻ってきた。

「危なかった! ダウンフォース少なすぎで、リヤのウイングもかなり寝かしていた。僕の走りを見て、他のドライバーもリヤウイングを修正して行ったと思います(笑)」と苦笑いだ。

 その後、2度目、3度目とアテンプトし、最後のアテンプトでチームメイトのマーカス・エリクソンのタイムを上回って、トップに立った。

 4周平均では、琢磨がトップ、エリクソンが2番手、ディクソン10番手、パロウが11番手とチップ・ガナッシ4台とも12番手以内におり、チームパフォーマンスとしては昨年に続き素晴らしいものを発揮している。

 それに続くのは、ペンスキー勢、マクラーレン勢、アンドレッティ勢といったところか。

予選を想定した走行を行う佐藤琢磨

 琢磨は「最後はコンディションも変わって良くなっていたし、タイムが出るのもわかっていたので、少しギャンブルした部分もありました」

「アテンプトごとに4台がみんなどういう状況かわかってました。チームも僕のデータを見てましたし、僕も他の3台がどんな状況かわかってました。4台が微妙に好みがわかれているとこもありますけど、全体的に速くなって良かった」とコメント。

 今日のプラクティスは無事に終わったものの、最後の行われた予選アテンプトのドロー(くじ)で、琢磨のアテンプトは25番目となった。琢磨は「厳しいなぁ~」とひと言。

 予選開始は11時となるが、段々と気温と路面温度が上がる後半ほど苦戦するのが通例で、2020年琢磨は予選順が早かったおかげでファストシックスまで順調に進みフロントロウの3番手を手に入れた経緯がある。

 25番目のアテンプトと聞いて、琢磨がどんな表情をしたか、そこは想像にお任せしよう。笑顔でなかったことだけは確かだ。

 ちなみにチームメイトたちは、エリクソンが6番目、ディクソンが9番目、琢磨が25番目、パロウが28番目だ。琢磨にはエリクソンとディクソンの情報は入るだろうが、その間にも刻々とコンディションが変わる。

 まず琢磨が望むフロントロウに並ぶには、予選初日を12位以内で進み、その後日曜日の最初のアテンプトで6番手以内に。そして最後ファストシックスで2列目以内のグリッドを決することになる。

 日曜日のアテンプトは土曜日の12番手からのアテンプトとなるため、土曜日の予選でなるべく好タイムをマークして、日曜日のアテンプトはなるべく後半で臨むのがセオリーだ。25番目からの予選ではかなり厳しいかもしれないが、そこは琢磨の底力に期待するしかなさそうだ。まずは土曜日の予選に注目だ。
 

佐藤琢磨の顔も刻まれたインディ500のボルグワーナートロフィー

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