【令和最新】出産前後で覚えておきたい制度と見過ごしがちな申請まとめ

妊娠・出産にまつわる制度は著しく変化しています。出産育児一時金は42万円から50万円へ、新たに「出産・子育て応援ギフト」10万円相当も給付されるようになりました。2023年に私自身も5人目を出産し、制度の恩恵を受けましたが、変化のスピードが早く、せっかく制度があっても申請漏れをする方もいるのでは……と感じました。

今回は私の経験も踏まえ、出産前後で覚えておきたい基本から最新情報、見過ごしがちなポイントをそれぞれ解説します。


妊娠・出産に関する制度の基本

まずは基本の制度をおさらいしましょう。経験者の方は、特に変更点に注目です。

妊婦健診の費用助成

妊婦健診は保険適用がなく、自己負担となります。初回は費用がかかりますが、その後は妊婦健診の受診票により、無料になります。各自治体によって助成内容は異なり、必ずしも全額無料になるわけではありません。

ほとんどの自治体で14回分の受診票がもらえますが、出産予定日超過などで受診票を使い切った後は、自己負担となります。里帰り出産では受診票が使えないこともありますが、自治体に必要書類を提出すれば、後日振り込まれる場合があります。

出産育児一時金が42万円から50万円に

出産したときは、出産育児一時金が支給されます。令和5年4月より42万円から50万円に上がりました。双子の場合は100万円になります。妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は、支給額が48.8万円となります。

基本的には「直接支払制度」の合意書を提出し、50万円が差し引かれた残額を産院で支払うことになります。費用が50万円に満たない場合は、差額を受け取ることができます。直接支払制度を使わない時は「産後申請方式」になり、いったん全額を負担後、申請してから出産育児一時金を受け取ります。

直接支払制度が使えない一部の産院などでは、「受取代理制度」を利用します。直接支払制度と同様に差額の負担になりますが、妊婦さん側の手続き事項は直接支払制度よりも増えます。

高額療養費

妊娠出産にかかる費用は通常、健康保険が適用されませんが、帝王切開や吸引分娩など異常分娩の場合は適用になります。健康保険適用の支払いが高額になった場合、「高額療養費」として自己負担限度額を超えた部分が戻ってくる場合があります。

加入している健康保険(国民健康保険は自治体)に申請して、事前に「限度額適用認定証」を発行しておけば、限度額を差し引かれた金額を支払うことができます。後から申請する場合は、全額支払った後に請求すると、限度額を超える部分の払い戻しを受けられます。

なお、自己負担額は世帯年収や標準報酬月額などから計算されます。

出産手当金

出産手当金は、働くママが産前・産後休暇を取得中にもらえる手当金です。出産手当金として、標準報酬月額の約2/3を受け取れます。産前6週間から産後8週間が給付期間です。条件に該当すれば、パートの方や、出産で退職する方ももらえる可能性があります。

給与が支給される場合は、出産手当金の日額以上の報酬を受け取ると、出産手当金は対象外になります。

育児休業給付金

産後休暇が終わると、育児休業に切り替わります。育休中にもらえる給付金が「育児休業給付金」です。雇用保険に加入していて、仕事に復帰予定の人が受け取れます。金額は以下の通りです。

育児休業開始から180日間:月給の67%(月上限301,902円)
育児休業開始から181日以降:月給の50%(月上限225,300円)

子どもが1歳になるまで支給されます。やむを得ず保育園に入れなかった場合などは2歳まで延長できます。

乳幼児医療費助成

乳幼児医療費助成により、子どもの医療費の一部、または全額を自治体が負担してくれます。自治体によって自己負担がないところや、1回の自己負担が500円など、それぞれ違いがあります。適用される年齢に違いがあったり、所得制限がある自治体もありますので、自治体のサイトなどでご確認ください。

児童手当

児童手当は、0歳から中学卒業までの子どもがいる家庭が受け取れます。

手当の月額は、3歳未満が一律15,000円、3歳以上小学校修了前が10,000円(第3子以降は15,000円)、中学生が一律10,000円です。「第3子以降」とは、高校卒業までの子どものうち、3番目以降をいいます。

原則として、毎年6月、10月、2月に、それぞれの前月分までの4ヵ月分の手当がまとめて支給されます。所得制限があり、所得が所得制限限度額以上、または所得上限限度額未満の場合は、特例給付として月額一律5,000円が支給されます。

なお、少子化対策の一環として、国会では、児童手当の所得制限の撤廃や対象年齢の拡大などが議論されているところです。

児童扶養手当

児童扶養手当は、ひとり親世帯が受け取る給付金です。18歳まで受け取れます。所得制限限度額により、全部支給と一部支給に分かれます。全部支給の場合は児童1人につき月額43,070円、2人目10,170円、3人目6,100円が加算されます。

最新情報:産後パパ育休や応援ギフト10万円が新設

出産育児一時金が50万円に増額されたほか、令和4年10月に「産後パパ育休」の創設と、「育児休業の分割取得」が可能になりました。新たに応援ギフト10万円の給付も誕生しました。

出産育児一時金

前述したとおり、大きな改正点として出産育児一時金が42万円から50万円に引き上げられました。令和5年4月からの改正です。流産や死産の場合でも、妊娠12週を経過していれば、出産育児一時金が支給されます(22週未満の場合は48.8万円)。

産後パパ育休

「産後パパ育休」は、出産後8週以内に4週間までパパが休暇を取得できます。通常取得できる育休とは別で取得でき、分割して2回取得することも可能です。必要な時期に分けて休暇を取ることで、育児と仕事のバランスが取りやすくなります。産後パパ育休も、育児休業給付金の対象(「出生時育児休業給付金」と呼びます)になります。

産後パパ育休では、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。例えば、産後パパ育休の期間中に出勤日を設けたり、1日の中で就労時間と休業の時間を分けることが可能です。なお、労使協定のない公務員は対象外となります。

育児休業の分割取得

産後8週を過ぎたら、通常の育休を1歳(最長2歳)になるまで取得できます。以前は分割できませんでしたが、産後パパ育休と同様に2回分割取得できるようになりました。ママも同様に分割取得できます。

パパ・ママ育休プラス

両親がともに育児休業を取得する場合、「パパ・ママ育休プラス」を使って、原則子どもが1歳までの休業可能期間が、1歳2ヵ月に達するまで(2ヵ月分はパパかママのプラス分)に延長されます。制度そのものは以前からありましたが、分割取得できるようになりました。

出産・子育て応援ギフト

出産・子育て応援ギフトは、令和5年から各自治体で順次開始されている少子化対策のひとつです。妊娠届出時と出生届出時に、それぞれ5万円相当の経済的支援を受けられます。令和4年4月以降にすでに出産した方も対象になり、10万円相当分を受け取れます。

厚労省によると、経済的支援の実施方法は「出産育児関連用品の購入・レンタル費用助成、サービス等の利用負担軽減等」としていますが、現金支給も認められています。実際は現金支給の自治体が多いようです。

「出産・子育て応援ギフト」は、「伴走型相談支援」と組み合わせた形で給付されます。自治体により内容は異なりますが、面談や家庭訪問などによる育児支援を受けた人が受け取れます。令和6年以降も引き続きの実施が検討されています。

見過ごしがちなポイント

あまり耳にする機会がない制度は、どうしても見過ごしがちになってしまいます。いくつかご紹介します。

自治体独自の支援

それぞれの自治体が独自でさまざまな育児支援を行っています。妊産婦へのアナウンス機会が少なく、申請もれになりがちです。

例えば、大阪府の「子ども食費支援事業」。18歳以下の子どもや、妊娠している方に税込5,000円相当分の「お米クーポン」、または「その他食料品」が給付されます。物価高騰による家計応援制度のため、申請は令和5年6月30日(金)までと短めです。

給付金ではありませんが、「産後ケア事業」も見落としがちな制度のひとつでしょう。自治体によって内容は異なりますが、わずかな自己負担で助産院などに産後ケア入院できます。

自治体が独自で行う制度の多くは、申請時期を逃すと利用できなくなります。自治体のサイトなどで積極的に情報を取りに行きましょう。

保険や医療費控除は自分で確認を

加入している医療保険の給付や医療費控除は、該当するかどうか自ら確認する必要があります。帝王切開などのいわゆる異常分娩の際は、医療保険の給付金が受け取れるかもしれません。加入している保険の内容をチェックし、該当しそうな場合は早めに保険会社に連絡して必要書類を揃えましょう。

医療費控除は1月から12月の年間医療費が原則、家族で10万円を超えると適用できます。差額ベッド代などは対象外ですが、保険適用外の妊婦健診や通常分娩の費用、電車代なども医療費控除の対象です。給付金などは差し引いて計算します。

該当する場合は税務署で確定申告すると、所得税の還付金を受け取れたり、住民税が安くなることがあります。医療保険の給付や医療費控除に該当しても、保険会社や自治体側には分かりません。申請を促される機会がありませんので、自ら調べて申請しましょう。

子どもに関する情報&書類は整理整頓を

出産前後には、子ども関連の情報や書類がたくさん届きます。赤ちゃんのお世話で多忙な時期なので、やるべきことをつい忘れがちです。申請もれを防ぐため、例えば以下のような工夫が必要でしょう。

・子ども関連書類の置き場を1箇所に定める
・要処理と保管の書類を区分する
・配偶者やパートナーと情報共有する

最低限、子どもの書類の場所だけは決めておきましょう。ママにとっては、心も身体も大変な時期ですが、家族と協力しながら面倒な申請はサッと済ませたいですね。

利用できる制度は徹底的に活用し、安心して育児できる環境を作っていきましょう。

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