[食の履歴書]藤田朋子さん(女優) おいしい米、桃、甘酒 応援してます!福島

藤田朋子さん

私は2年前に仲間たちと一緒に「もぐもぐ福島」というユーチューブチャンネルを始めました。福島のおいしい物をただただ食べて、感想を発信しています。仲間たちがそれぞれ自分の家からリモートで参加して、「おいしいね」などと語り合うだけの緩いチャンネルです。

第1回は「なみえ焼そば」。太くてモチモチの麺と、シャキシャキのもやしの食感の違いが面白い、焼きそばと焼きうどんのいいところが合わさっているといった感想を言い合いました。

東日本大震災の直後に、福島の除染のお手伝いをする「ごしごし福島基金」という非営利団体を立ち上げて、除染に関する活動をしていました。震災前にテレビでご一緒したことがある放射線に詳しい大学教授に相談し、できる範囲で除染に関するお手伝いをしたんです。でもここ何年間かは、新型コロナのために、なかなか身動きが取れず、これからどうしようかと皆で話し合い、「おいしい物を食べることで福島を応援していこう」ということになったんです。

この活動を通じて、福島産のおいしい物をたくさん知りました。

お米は「福、笑い」。私はモチモチしたご飯が好きなので、「福、笑い」の食感はピッタリ。冷めてもおいしいのもうれしいですね。

果物では、なんといっても桃。それとキウイフルーツを小さくしたようなサルナシは栄養も豊富ですし、ジュースを飲んでもおいしいです。

仲間たちから評判がいいのが、牛乳。福島出身の方は「もぐもぐ」の時に、必ず福島産のコーヒー牛乳を飲んで参加しているんです。

都内のスーパーで売っている甘酒には、福島産のものがけっこうたくさんあることを知りました。おいしいと思って買っていた甘酒が、よく見てみたら福島産だったんです。

私が福島を応援しようと思ったのは、母が喜多方出身だからです。

東日本大震災の後、多くの芸能人は少しでも役に立ちたいと思い、炊き出しに行ったり、コンサートをして募金を集めたりしていて、私も自分にできることは何かと考えました。被災地はあまりにも広範囲でしたので範囲を絞ることにして、母の出身地である福島の方々の助けになれればと思ったんです。

母は栄養士の資格を持っていて、料理を作るのも、皆に振る舞うのも大好き。私が学生演劇をやっていた頃は、皆の分のおにぎりを握ってくれました。50個とか60個とかを握ってくれたんです。他にも唐揚げと卵焼きを作ってくれて、私はそれを持ってリハーサルに行ってたんですよね。

学生の頃ですから、タクシーに乗るなんて考えは全くなくて、電車を乗り継いで移動しました。差し入れのあまりの重さに、腕がもげるんじゃないかというくらいの思いをして運びました。特に地方から出てきて独り暮らしをしていた仲間は、母のおにぎりがうれしかったようで、大喜びで食べていました。

仲間たちは稽古の帰りに、よくうちに寄りました。そうすると母は張り切って、料理を作ってくれたんです。「ハンバーグができたよ」と運んでくれたから「うれしい」と皆で食べていたら、今度は「ドリアができたよ」。ドリアを食べ終わる頃には「エビフライができたよ」。メインディッシュが3回くらい出るので、皆「え?」と驚きつつも、喜んでしっかりと食べていました。

そういう母を見て育ったので、私は食べることが大好きですし、料理が人を笑顔にすると感じています。また、食材を作ってくれる方々への感謝の気持ちも強いです。母の故郷・福島の農家さんが作ってくれる物を大切にいただきたいですし、微力ながらも応援を続けていけたらと思っています。 聞き手・菊地武顕

ふじた・ともこ 1965年、東京都生まれ。87年、ミュージカル「レ・ミゼラブル」で女優デビュー。翌年、NHK朝の連ドラ「ノンちゃんの夢」に主演し、人気を博す。90年から長年にわたって、ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」で主人公・岡倉大吉の五女・長子を演じるなど、多彩に活躍。福島県いわき市を舞台にした出演映画「こわれること いきること」が福島県で先行上映中、5月26日から全国公開。

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