ポール獲得にライバル増加も7番手で予選2日目に挑む佐藤琢磨「明日に向けてまたしっかり対策を練りたい」

 第107回インディ500の予選1日日は快晴の中で始まった。ファストフライデーの夜インディアナポリス周辺はスコールが来て、すべてを洗い流すような雨だったが、土曜日の朝にはすっかり晴れて、インディアナポリス・モータースピードウェイは路面を乾かす作業に追われていた。

 前日にドロー(くじ)で決まった順に1列に並び、各々準備をしてアテンプトに入っていく。今年は11時から予選開始。まだ風も涼しくコンディションも良い。スポット参戦のライアン・ハンター-レイ(ドレイヤー&レインボールド)を皮切りに順次コースに出ていった。

 まず注目されたのはチップ・ガナッシのチームメイトで昨年のウイナー、マーカス・エリクソン。エリクソンは4周のアベレージスピードで時速232.735マイルをマークしてトップに立つが、8番目にアテンプトしたアロウ・マクラーレンのアレクサンダー・ロッシが233.528mphで逆転し、しばらくはカーナンバー7がパイロンタワーのトップに燦然と輝く。

 これを昨年のポールシッター、チップ・ガナッシのスコット・ディクソンが破れるかが注目された。ディクソンはロッシの直後にアテンプトしたが、タイムは232.914mphとロッシには届かなかった。ディクソンは大きなミスをしたわけでもなく、いかにマクラーレンとシボレーがこの予選に向けて対策してきたかがわかる。

 佐藤琢磨のアテンプト順は25番手。前日にその順を知った瞬間のガッカリ具合は表現しづらいものがあった。幸いなことに、気温はさほど上がらなかったが、路面の温度はやや上がっていた。

 琢磨はファストフライデイの激走を再現するかのように、今日もマシンが振られたが、最後まで走り切って232.857mphをマーク。この時点の6番手となった。

ピットレーンを飛び出てアテンプトへ向かう佐藤琢磨

 予選2日目に進めるのはトップ12台。マシンの仕上がり具合を考えれば、ここから脱落する可能性は低かったが、このままでは満足できないのが琢磨だった。

 琢磨の後28番手にアテンプトしたチームメイト、アレックス・パロウが233.398mphというスピードを出し、2番手までジャンプアップする。

 パロウは昨晩エンジンを載せ替えており、それだけが理由ではないだろうが、コンディションを考えてもパロウは速かった。

 ガレージに戻った11号車は、さらにセッティングに変更を加えて、2度目のアテンプトに出た。

 1回目のタイムを残してアテンプトするレーン2に並び、コースに出た。コンディションはさほど変わらなかったが、1周目から234マイル台に入って、ポジションアップに期待がかかった。4周のアベレージでは233.322mphと5番手に浮上した。チームメイトのディクソンも2度目のアテンプトで4番手までタイムを上げている。

TOP12以内を目指しアタックする佐藤琢磨

 予選終盤16時を過ぎた頃から、アテンプトのレーンは徐々に混み始め、レーン2でタイムを更新したいクルマと、バンプアウトを避けるためにレーン1で最初のタイムを捨ててアテンプトに進むクルマが並びカオス状態に。

 チップ・ガナッシ勢は全車がレーン2に並び。ディクソン、琢磨は3度目、エリクソンは4度目、パロウは2度目のアテンプトを待った。

 しかし残り時間が迫るとレーン1に、レイホール・レターマン・ラニガンとデイル・コインのクルマが並び、30番手以内に入るためのアテンプト合戦に。両チームとも過去に。琢磨が在籍していたチームだと思うと皮肉に思えてならない。

 結局17時50分の終了の合図で、チップ・ガナッシ勢のアテンプトはならなかったが、パロウが3番手、ディクソンが5番手、琢磨が7番手、エリクソンが10番手という順でトップ12に全車食い込んだ。

 最速タイムだったのはマクラーレンのフィリックス・ローゼンクヴィスト。2度目のアテンプトを233.947mphで見事にまとめ上げた。

 ホンダ勢でトップ12に入ったのはチップガナッシの4台のみ。シボレー勢は今年大きく巻き返し、マクラーレン勢の4台全車、AJフォイトの2台、エドカーペンターのリナス・ヴィーケイ、ペンスキーのウィル・パワーと8台が残っている。

 昨年圧倒的な予選の速さを持っていたチップ・ガナッシだったが、今年はマクラーレンとシボレー勢に一目置かなくてはならないだろう。

 琢磨にとってチームメイト以外にも強力なライバルが立ちはだかり、理想とするフロントロウ獲得は果たしてなるのだろうか。

「今日の予選は1回目のアテンプトで、もう少しタイムを出したかったですね。マシンが少し振られてしまったけど、2回目はそれなりにまとめて走ることができたと思います」

「アテンプトに出ていくタイミングも難しくて、あまりリスクも背負えなかったので、今日は仕方なかったですね。それぞれ情報を共有して4台ともトップ12に残れたし、明日に向けてまたしっかり対策を練りたいと思います」と振り返る琢磨。

 果たして琢磨のミラクルは起きるのか? まずはトップ12の予選でトップ6に残れば、ポールポジションを賭けたファイアスト・ファストシックスで最後のアテンプトが待っている。

アテンプト後には恒例の記念撮影。11号車のクルーと共に

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