赤信号なのに「→」「↑」「←」の3方向の矢印、青信号とどう違うの? 答えは…青信号とほぼ同じ!対向車の停止を強調 運転手戸惑いも、新潟県警「交通整理のため」

3方向に矢印が表示される時差式信号=新潟市江南区

 「時差式の信号機って戸惑いませんか」。こんな指摘が、読者から「新潟日報もっとあなたに特別報道班」(もあ特)に寄せられた。職場の同僚とも、車で道を走っていて出くわす不思議な信号機の話で盛り上がった。例えば、赤信号なのに右と左、直進のあらゆる方向に矢印が出ている信号機は、青信号とどう違うのだろうか。信号の脇には「時差式」との表示もある。疑問を解消するために、新潟県警に話を聞いた。(報道部・西山祥子)

 時差式信号機は、対面通行の道路でいずれか一方の通行時間を延長する信号機。対向車が停車していても、青信号が出ているこちらは進むことが可能だ。3方向に矢印が出る信号機も時差式信号の一種。ただ、運転中に出くわすと、赤信号に戸惑ってついブレーキを踏んでしまう人もいるようだ。疑問を寄せた読者は、「特に運転初心者は迷ってしまうのでは」と心配する。

 新潟県警交通規制課によると、3方向の矢印信号を含む時差式信号機は、対向車との安全を確保しながら交通の円滑化を図る目的で設置されている。明確な事故件数のデータはないが、信号に詳しい交通規制課の技術職員小林俊義さん(63)は「これまでの経験の中では、時差式信号で事故が多発しているという話は聞いたことがない」と話す。

 3方向の矢印信号は県内でも長く運用されており、表示できる構造の信号機は県内約30の交差点にある。いずれも方向によって交通量に偏りがあったり、形状が特殊だったりという所だそうだ。

 「全ての矢印が出ていれば、青信号とほとんど同じ意味です」と小林さん。それでも、青色の灯火に比べると、赤信号に矢印を表示することで対向車が交差点で止まるイメージがしやすい。ドライバーが不必要に速度を落とすといった状況を防ぎ、混雑の緩和が期待できるのだとか。

 例えば、新潟市江南区で信濃川大橋のたもとにある天野交差点では、橋を渡ってくる車の交通量が多い。ただ、道幅が狭くて右折専用車線がなく、通常の信号では橋の上も含めて混雑してしまう。このため対向車を止め、スムーズに通行できるよう、全方向の矢印信号機が使われている。

 「信号の表示が複雑だと運転者の迷いが生じるのは事実。でも、交通整理のためにやむを得ず使っています」と小林さん。珍しい三つの矢印は、交差点の形や交通の状況に応じて、安全に混雑を回避するための苦肉の策のようだ。

 小林さんは「信号だけに気を取られず、付近の車や歩行者にも注意しながら通行してほしい」と呼びかけている。

◆遠出増えるレジャーシーズン、車間距離保ち安全運転を

 交通事故を防ぐには、信号や標識などの意味を理解した上で安全運転を心がけるのが大切だ。遠出が増えるレジャーシーズン。旅先では慣れない道に不安を感じることも多い。新潟関屋自動車学校の協力で、適切な車間距離やブレーキの踏み方を教えてもらった。

 新潟関屋自動車学校指導部長の歌代(うたしろ)和幸さん(48)は「車間距離に余裕を持つことが大事」と強調する。前方の危険を予測しやすくなるためだ。

 前の車に近づきすぎると、その先の道路状況を広く把握することができない。おおむね十分な車間距離としては、前の車が通過した地点を3秒後に通ることを意識すると良いという。

 車間距離を確保していても、運転中のよそ見は禁物だ。旅先では車のナビを注視してしまい、ブレーキが遅れて追突事故につながるケースもある。歌代さんは「万が一の時はしっかりと急ブレーキを踏むことも大切」とした。

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