日韓首脳そろって慰霊碑へ 「遠くても近い国に」広島に住む韓国人被爆者は… 当時 多くの朝鮮半島出身者も犠牲に

21日、岸田総理と韓国の尹錫悦大統領が、そろって平和公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑に参拝しました。広島の在日韓国人被爆者は特別の思いでその時を待ちました。

去年8月、平和公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑で行われた慰霊祭です。原爆では、広島にいた多くの朝鮮半島出身者も犠牲になりました。

ことし、90歳の在日韓国人被爆者、朴南珠(パク・ナムジュ)さんです。

在日韓国人被爆者 朴南珠 さん
「娘時代の(写真)はありません。もう原爆で」

朴さんは、12歳のとき、爆心地から1.9キロ、現在の西区福島町付近の路面電車の車内で被爆しました。

朴南珠さん
「本当に残酷で非情、原爆って。たった1発、ピカッと光って、ドカン。光って、ドカンで広島が消えて無くなった。もう、あの恐怖は今でも血が下がっていく」

爆心地付近で行方不明になった義理の兄を探しに行った父親は戦後、体のだるさで働けなくなり、朴さんは女学校に復学することができませんでした。また、3つのがんを患いました。

在日韓国人被爆者 朴南珠さん
「核兵器は絶対悪。核は許せない。あまりに残酷で非情だった。そのときだけでなく、後遺症を残していく」

核廃絶を訴えて90歳の今も被爆証言活動を続けている朴さん。

朴南珠さん
「本当に近くて遠い国ではなくて、遠くても近い国になってほしいと思う」

そして、その朴さんも立ち会って、21日、歴史的な日を迎えました。

平和公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑では、岸田総理が待つ中、午前7時半すぎ、尹錫悦大統領が到着しました。

岸田総理と尹大統領は、それぞれの夫人を伴い、祈りを捧げました。

広島の原爆で犠牲になった多くの朝鮮半島出身者を慰霊し、平和を願って1970年に建立された韓国人慰霊碑。日韓首脳がそろって訪れるのも、韓国大統領が訪れるのも、今回が初めてとなります。ここで2人は握手を交わしました。

この場には、広島で暮らす在日韓国人被爆者・朴さんも立ち会いました。

在日韓国人被爆者 朴南珠さん
「本当に長生きしてよかった。その感謝の気持ちでいっぱいだった。日本と韓国は、近くて遠い国といわれていたが、本当にきょうは近い国だなと」

献花した後、両首脳はことし3回目となる日韓首脳会談を行いました。

岸田総理
「(3度の会談は)われわれの元で日韓関係の進展を如実に示すもの。ともに韓国人慰霊碑に祈りを捧げることができた。日韓両国関係、世界平和を祈るうえでも大たいへん重要なことだった」

韓国 尹大統領
「きょうの共同参拝は韓国人犠牲者を追悼すると同時に、未来に備えた総理の勇気ある行動として、みんなの記憶に残ることと思う」

近くて遠い国といわれた日本と韓国。きょうの一日は、今後の日韓関係にどういう意味を持つことになるのでしょうか?

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