〈高校相撲金沢大会〉周囲の支えで悲願の高校V 元中学横綱の高岡向陵・五十嵐

個人で優勝し、仲間に胴上げされる五十嵐選手=金沢市の石川県卯辰山相撲場

  ●「うれしい、最高」

 渾身(こんしん)の突きで攻め、悲願の高校日本一を成し遂げた。21日、生まれ変わった石川県卯辰山相撲場のこけら落としとなる第107回高校相撲金沢大会で、高岡向陵の五十嵐翔選手(3年)が個人戦を制した。3位となった団体戦を含め、自身は12戦全勝と快進撃を見せた。「中学横綱」となってから2年半。ようやくつかんだ頂点に「家族や先生、仲間に支えられて結果を残せた。うれしい。最高です」と喜びをかみしめた。

 決勝の土俵に上がると、チームメートがいる観客席を振り向き、にっこり笑った。「楽しんで相撲を取る」。立ち合い鋭く、迷いのない突きを繰り出し、最後は送り出しで勝利。力強く拳を握り、応援団の歓喜の声と拍手で会場が沸いた。

 高岡市博労小5年で相撲教室に通い始め、同市南星中3年時に中学日本一となったが、高校では個人ベスト16が最高だった。「けがも多く、何度も心が折れた」。それでも、学校の相撲場に行くと前を向くことができた。「みんな頑張っているのを見て、キャプテンとして頑張らないといけないと感じた」と力が出た。

 自身についた中学横綱の冠は「勝つのが当り前で、プレッシャーでしかなかった。きつかった」と振り返る。金沢大会は気持ちを切り替えられた。3月の全国高校新人選手権(高知)で敗れ、父隆二さん(42)と「守る相撲じゃなくて、自分本来の突き、押しの攻めの相撲をしよう」と話したことがきっかけだった。

 言葉通りの相撲を取った。4月に左膝の半月板を損傷し、かばう影響で右膝も痛めた。決勝トーナメントの土俵は満身創痍。そんきょもできなかった。隆二さんは「ひざがボロボロ。見ていられない」と観客席でともに戦い、優勝に「迷いがなくなったいい相撲だった」とねぎらった。

  ●団体は2人と総体で雪辱誓う

 中山昌監督は「もう一回日本一を取るためにやってきた。最後は気持ちで勝ちきってくれた」とたたえた。五十嵐選手は「団体では優勝できず、絶対に個人で取ってやろうと思った」と会心の笑みを浮かべ、インターハイでの団体、個人2冠へ力を込めた。

 団体は先鋒・高島一人(2年)、中堅・五十嵐、大将・平河ジェイキ(3年)の3選手で挑み、決勝トーナメント初戦の2回戦で市川(兵庫)、3回戦で宇和島東(愛媛)、準々決勝で足立新田(東京)をそれぞれ破り、準決勝で五所川原農林(青森)に敗れた。

 敗戦後に涙が止まらなかった平河選手は「自分の相撲が甘かった。ただ、気持ちは勝った」とインターハイでの雪辱を誓い、高島選手は悔しさをあらわにしながらも「ここは故郷でもあるので自信をもらえた」と充実感をにじませた。

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