<金口木舌>昆虫食で考える

 食育に関する展示会で一つのパネルに目が留まった。高タンパク質というコオロギ食の可能性に触れていた。東京には行列ができる人気の昆虫食レストランもある

▼海産物の乏しい地方ではイナゴをつくだ煮にした。戦争体験談には飢えをしのぐためイナゴを捕ったという話が出てくる。現在、昆虫食が注目される背景には食料問題がある

▼きっかけは2013年の国連食糧農業機関(FAO)の報告書。人口増で深刻化する食料不足を補う昆虫食の利点を論じ、評判となった。当時の記事は「『昆虫食』がトレンド」と紹介していた

▼牛などの大型家畜と比較して昆虫は二酸化炭素の排出量は少なく、地球温暖化対策に役立つという議論もある。人類の未来を約束するのは栄養たっぷりのコオロギなのだろうか

▼昆虫食のパネルを見ながら考える。「飽食の時代」はいつまでも続くまい。日本の食は今のままでよいか。コオロギに未来を託す前にやるべきこともある。「お米一粒でも粗末にするな」とお年寄りに?られたことを思い出している。

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