自分の言葉で

 瓦礫(がれき)と化した街を目の前にして立ち尽くす医療関係者、空を覆う重い雲と渇いてひび割れた土地、お金をザクザクと無遠慮に飲み込む化け物。それら全てが1発の核爆弾に載っている▲G7サミットが広島で開幕した19日の新聞、紙面の真ん中にあった見開きの広告をご記憶だろうか。〈核兵器の危険性をテーブルにならべて話し合ってみませんか〉-。そんな呼びかけに、たくさんの企業や団体からご賛同をいただいた▲“核の冬”が引き起こす干ばつや飢餓、生涯にわたってつきまとう健康被害と病への不安、核兵器を維持するために必要となる莫大な費用…。核兵器が存在してはならない理由は、熱線や爆風、放射線の破壊力ばかりではない▲実は気になる一文があった。〈今日まで核戦争が起きなかったのは奇跡〉。いや、違う、それは神様が起こしたことではない、危機を回避し、使用を思いとどまらせてきたのは人間の目や手や知恵だ…と反論を思いついたが▲この項の英訳の「ピュア・ラック」には深くうなずいた。地球上に核兵器がある限り、核戦争が起きずにいるのは「まぐれ」で、私たちは「運が良かっただけ」なのかもしれない▲「核兵器が存在してはならない理由」をあなたは自分の言葉でいくつ言えますか…広げた紙面が問いかけてくる。(智)

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